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葉の形を決める仕組みの新たな発見 〜平らな葉をちぢれ葉にしてわかったこと〜

2010年12月1日

 小山知嗣 生命科学研究科特命助教らのグループが、植物の葉の形を決める遺伝子ネットワークを新たに明らかにしました。この研究成果は米国誌「Plant Cell」のオンライン速報版で公開されました。

論文名: TCP transcription factors regulate the activities of ASYMMETRIC LEAVES1 and miR164, as well as the auxin response, during differentiation of leaves in Arabidopsis

背景

 植物の葉がいろいろな形を持つことは、普段の生活でよく見かけます。そこで、それぞれの植物がどのように葉の形を決めるのか、また、進化の過程で、多様な形がどのように獲得されてきたか、ということについて興味が持たれています。アブラナ科のシロイヌナズナの葉は(図1)、葉柄と呼ばれる細長い部分を伸ばして、楕円形の葉身を支えています。葉身は全体的に平らで滑らかですが、縁にギザギザ状の小さな鋸歯(きょし)を持っています。世界中でシロイヌナズナの葉の形を決める仕組みについて研究されているにもかかわらず、多くの不明な点が残されています。

研究成果の概要

 研究ブループは、植物が共通して持っているTCP遺伝子群に着目し、研究を行いました。交配などにより、TCP遺伝子に遺伝的な傷を入れて、その機能阻害したところ、破壊された遺伝子数に応じて、シロイヌナズナの葉が、段階的にちぢれることを見いだしました(図2)。

 逆に、遺伝子組換え技術を用いて、TCP遺伝子を過剰に作用させたところ、野生型で認められる鋸歯がなくなり、平らな縁を形作ることを明らかにしました(図3)。

 興味深い事に、TCP遺伝子はシュートメリステム(図4、茎頂分裂組織: 茎の先端部にあり、葉を作り出すための組織)の形成にも関わることがわかりました。7遺伝子破壊株では、シュートメリステムが異常な場所で形成されました。逆に、TCP遺伝子の機能をさらに強く作用させると、シュートメリステムが形成されないことがわかりました。

 これらの結果から、TCP遺伝子群は葉の滑らかな形をつくる働きと、シュートメリステムの形成を阻害する働きの、2つの役割を持つことがわかりました。

研究の意義

 なぜ、シロイヌナズナは似た働きを持つTCP遺伝子を重複して持つのでしょうか。シュートメリステムから葉を作ることは植物のライフサイクルの根幹です。もし、TCP遺伝子が1つなら、その働きにより、平らな葉をつくるどころか、シュートメリステム形成を阻害してしまうかもしれません。逆に、TCP遺伝子に遺伝的な傷が入ってしまった場合には、葉は作られず、シュートメリステムだけの植物になるかもしれません。つまり、生存するためには非常に不利になります。このように、TCP遺伝子を重複して持つことにより、生存戦略を有利にすることができると考えられます。さらに、進化の過程で、ひとつのTCP遺伝子の働きが変ってしまった場合でも、生存に不利になることがないので、葉の形が変わるきっかけになる可能性を示唆しています。

 一方、本研究の成果として、ちぢれ葉の作成方法が提案できました。そこで、園芸植物にフリル形態を与えることや、食感の異なる葉野菜をつくることなど、本成果の応用展開が期待されます。

研究チーム

 本研究は、小山特命助教が佐藤文彦 生命科学研究科教授の研究室で行ったものです。本研究の成果は小山特命助教、高木優 産業技術総合研究所主幹研究員/グループ長と光田展隆 同研究員、関原明 理化学研究所植物科学研究センターチームリーダーと篠崎一雄 同センター長の5名からなる研究チームによるものです。また、小山特命助教は平成21年度京都大学若手研究者スタートアップ研究費の支援を受けました。

関連リンク

論文は、以下に掲載されております。
http://dx.doi.org/10.1105/tpc.110.075598
 

  • 朝日新聞(12月7日 30面)、京都新聞(12月1日夕刊 8面)、日本経済新聞(12月1日夕刊 14面)、毎日新聞(12月1日夕刊 2面)および読売新聞(12月6日 32面)に掲載されました。