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1平方インチ当たり3.9兆個のドットが規則的に配列された超微細パターンを形成 -高分子材料の自己組織化現象を活用した超高密度ナノパターニング技術を開発-

2010年11月25日

 京都大学(総長: 松本 紘)および独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)(理事長: 村田 成二)、東京工業大学(学長: 伊賀 健一)、株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明)は、HDDの記録密度を大幅に向上する「ビットパターンメディア」へ適用する要素技術として、1平方インチ当たり3.9兆個のドットが規則的に配列された超微細パターンを形成することに成功しました。

 今回、長谷川博一 工学研究科教授らが開発した超高密度ナノパターニング技術を「ビットパターンメディア」に適用すると、現在のHDDの記録密度(約500Gビット/平方インチ)の約8倍の記録密度に相当します。開発した微細パターン形成技術は、この「ビットパターンメディア」実現への重要な要素技術となるものです。

 この成果はNEDOの「超高密度ナノビット磁気記録の研究開発(グリーンITプロジェクト)」の一環として得られたものです。

 なお、この成果の詳細は、2010年11月29日から12月3日まで米国ボストンで開催される材料技術に関する国際会議「2010 Materials Research Society Fall Meeting」にて発表する予定です。

背景

 IT社会の進展に伴い、HDDは社会を支える大容量ストレージとして不可欠なものとなっています。さらに、データセンタなどで扱われる情報量の増加に伴い、消費電力の増大が問題視されるなか、HDDの高密度・大容量化は、装置の小型化などに寄与することから、省エネルギーで環境に配慮した社会を実現する重要技術として注目されています。

技術内容

 NEDOが推進するプロジェクトのもと、京都大学、東京工業大学と株式会社日立製作所は、基板の表面に特定の高分子が集まりやすいよう化学的なマークを設け、このマークに沿って微細なパターンを秩序よく形成させるケミカルレジストレーション法を用いて、基板表面に形成されるドットパターンをさらに微細化するために、周期10nm級のドットパターンを形成する「有機・無機ハイブリッド高分子ブロック共重合体」を開発しました。また、この高分子を用いて基板上の化学的なマークとマークの間にもドットを挿入することで、より密度の高いパターンを形成する「パターン密度高倍化技術」も開発しました。

 その結果、電子線直接描画法(EB法)により形成した周期24nmの疎なマークの間に、ドットを1個挿入し、100µm2の領域全体に周期12nm間隔でドットを目的の方向に規則的に配列することに成功しました。これはEB法で形成したパターンと比べ、4倍の密度となるもので、従来のリソグラフィ技術では作製が困難な1平方インチ当たり3.9テラドットの面密度に相当するものです。

(1)有機・無機ハイブリッド高分子ブロック共重合体

 ケミカルレジストレーション法においては高分子ブロック共重合体が自発的にドットパターンを形成する現象を活用してパターンを作製します。この際、パターンのサイズを小さくするためには高分子ブロック共重合体の分子量を小さくする必要があります。しかしながら、従来の高分子ブロック共重合体では分子量を小さくすると自発的な構造形成が起こらないという課題がありました。今回、高分子ブロック共重合体を、シリコン原子を導入したハイブリッド型とすることで、自己組織化力を大きくし、周期10nm級の極微細ドット構造を形成できるようにしました。

(2)パターン密度高倍化技術

 ケミカルレジストレーション法では、基板上に形成した化学的なマーク上にドットを集合させることで微細なパターンを形成します。最近では、マークとマークの間にもドットを挿入することでパターンの密度を高密度化できることが実証されています。今回、「有機・無機ハイブリッド高分子ブロック共重合体」が形成するドット構造に対応した化学的マークの作製方法および、基板を溶媒蒸気雰囲気に暴露することで精度よくパターン密度を高倍化できる技術を開発しました。

    

  1. 今回開発した自己組織化パターン例

用語解説

ビットパターンメディア

HDDなどに用いられる磁気記憶媒体の構造の一種で、磁性粒子が人工的に規則正しく並べられた記録媒体のこと。

ケミカルレジストレーション法

基板の表面に特定の高分子が集まりやすいよう化学的なマークを設け、このマークに沿って微細なパターンを秩序よく形成させる手法。

電子線直接描画法

マスクパターンを用いずレジストを電子線により直接描画するリソグラフィ法。