柏原 正樹 数理解析研究所教授が藤原賞を受賞(2008年7月15日)

柏原 正樹 数理解析研究所教授が藤原賞を受賞(2008年7月15日)

  第49回藤原賞が、藤原科学財団より数理解析研究所所長 柏原 正樹教授に授与され、6月17日に東京学士会館において贈呈式がおこなわれました。同賞は、1960年から科学技術の発展に貢献した研究者に贈られ、数学・物理、化学、工学、生物・農学、医学の分野から毎年二人が選ばれています。

 柏原教授は、昭和22年生れ、昭和46年東京大学大学院理学系研究科修士課程を修了後、同年本学数理解析研究所助手、昭和49年名古屋大学理学部助教授、昭和53年数理解析研究所助教授を経て、昭和59年同教授に就任、現在に至っています。

 柏原教授は、代数解析学の開拓者として、この分野の研究を主導してきました。関数を、それが満たす微分方程式を通じて研究しようというのが代数解析学です。関数の特徴は、その特異性に集中してあらわれます。微分方程式が与えられると、その解の特異性をはかる位相的データとしてモノドロミー群の概念が定まります。ヒルベルトは、逆に、与えられたモノドロミー群をもつ微分方程式が必ず存在するかという問題を提出しました。これは、ヒルベルトが20世紀初頭の有名な講演の中で20世紀の目標として提出した23の問題の中の第21問題で、1次元では成り立つことが1957年に示されていました。柏原教授は、長年懸案であった高次元の場合に、確定特異点型D加群と構成的層の一対一対応という形で、この問題に究極的な解答を与えました。これにより、解析(微分方程式)、幾何(モノドロミー、構成的層)という異なる数学的対象を結び付けることが可能となり、新しい展開の土台を与えました。実際、同教授は、これを用いてカジュダン・ルスティヒ予想を解決しています。

 今回の受賞が、同教授の研究の更なる発展の契機となるとともに、同教授に続く後進の輩出につながることを期待しています。