京大の「実は!」Vol.17 「京大生の実は! -FILE.2 京大生の勉学事情に迫る!-」

京大の「実は!」Vol.17 「京大生の実は! -FILE.2 京大生の勉学事情に迫る!-」

 京大生といえば、やっぱり「勉強熱心!」というイメージも大きいはず。

 ノーベル賞受賞者をはじめ、数々の優秀な研究者を輩出している京都大学。そこで学ぶ現役京大生の「勉学事情」も気になるところです。

 京大生って、どんな雰囲気の中、どんな勉強しているの?

 そんな素朴な疑問に迫るべく、今回の「京大生の実は!」では、現役京大生の勉学と、そのアウトリーチ活動に迫ります!

 ■今回紹介する京大生は・・・

 牧功一郎さん(工学研究科マイクロエンジニアリング専攻(再生医科学研究所バイオメカニクス研究領域)博士後期課程1回生(日本学術振興会特別研究員DC1))

 もともとは、工学研究科で機械工学を学んでいた牧さん。「「力学」という観点から、生体内の未知の仕組みを解き明かしたい!」と、生物世界(再生医科学研究所)へと転換した、根っからの研究好きな京大生です。

 まずは、そんな牧さんの所属する研究室(再生医科学研究所バイオメカニクス研究領域)にお邪魔しました!

現役京大生、こんな環境で学んでます!

おしえて牧さん! 「バイオメカニクス」ってどんな研究?


今回の京大生、牧さんです!

 僕が学ぶ「バイオメカニクス(生物+力学)」は、生物の仕組みを「力学」をキーワードに探る研究分野です。

 例えば、宇宙に行くと骨がスカスカになってしまうのですが、これは骨が常に重力を感じて構造を変えているから。からだの中の複雑な器官が形作られるとき、あるいは、死んだ細胞が周りの細胞からはじき出されるときも、細胞の押し合いへし合いや縮こまるときに生じる「力」が重要な要素になっています。

 生物に自然とそなわっているこのような「からくり」が、自分のもともとの「機械」への興味とリンクして、生体内の未知の仕組みを解き明かそう! という今の研究内容につながっています。


(左)研究室内のミーティングスペース。研究室の仲間とは、研究の話、それ以外の話、何でも話すそう。時にはアツイ議論になることも・・・。(中央)典型的な文系人間の私(広報B)にも、とてもわかりやすく研究領域について説明してくれる牧さん。難しい研究内容を、身近なことを交えながら楽しくレクチャーしてくれました。さすが~!(右)デスク周りにはお気に入りの絵などを飾ってリラックス空間に。

続いて、実験室にお邪魔しました!


「ここがぼくの実験室です」

 研究室に続いて、牧さんが普段ほとんどの時間を過ごすという実験室に潜入。

 実験に集中している時は、朝から晩までずっとこもっていることもあるそうです。

 ここで牧さんは、「ナノフィッシング」と呼ばれる、タンパク質1分子をつかんで引っ張り、その挙動を解析する実験を行っています。


(左)実験器具の「カンチレバー」。(中央・右)このカンチレバーをピンセットで掴むのも、実はかなり至難の業。これを上手く掴むのに、何週間もかかったそう・・・。今ではすっかりこのとおり。


(左・中央)これが牧さんが普段使用している実験用機械「原子間力顕微鏡(AFM)」。これにより、「ナノフィッシング」と呼ばれるタンパク質1分子の引っ張り試験を行い、解析を行います。(右)AFMを使うと、普通の顕微鏡と違い、いろいろなものの表面形状もわかります。この日は口の中の細胞を綿棒で取り出し、観察してみました。

「力に対して細胞がどれだけ敏感か、鈍感か? 人間の性質を知るように、細胞のさまざまな感覚を知りたい」という牧さん。

生き物らしい仕組みを調べるという部分には、工学で学んだ機械的な力学と大きな共通点があるそうです。こうして、さまざまな分野をまたいで新たな研究領域に飛び込める環境が整っていることも、京大ならではの大きな魅力なのです。

次は、そんな牧さんが科学の楽しさを広く発信するために行っている「アウトリーチ活動」をご紹介します!

科学の楽しさを伝えたい! こんなアウトリーチ活動もやってます。


この日のプログラム。
「細胞のチカラ」が牧先生のレクチャー。

 牧さんは、日々の勉学の傍ら、毎週土曜日に開催されている京都大学総合博物館の「週末子ども博物館」で、子どもたちに科学の楽しさを教える先生もやっています。

 「週末子ども博物館」に参加し出したのは、2年前に開催されたイベント「京大アカデミックデイ」の工学研究科ブースでおもしろい実験をしていたところ、総合博物館の大野照文館長に直々にハントされたことがきっかけだそう。

 なんと、今ではそんな牧先生には、かわいらしいファンもいるんです!

 そのリケジョさんの名前は、なつきちゃん。なっちゃんは初めて参加した子ども博物館で、牧先生のレクチャーを聞いて一目惚れ。その日から、牧先生と科学の世界のトリコになったそうです。それ以来、牧先生のレクチャーには毎回参加するようになり、さらには自分で実験や観察をして、その研究成果を博物館に持って来たりするようになりました。

 「それまでは、全く科学の世界に興味は無かったのに、牧先生との出会いがきっかけでどんどんのめり込んだんですよ」と、お母さん。最近はお母さんまで科学に興味を持ち始め、自宅でなっちゃんと一緒に実験しているんだとか。(なっちゃん曰く、「お母さんは助手!」(笑))

 この日も朝から、なっちゃんはいつものように牧先生を独り占めして嬉しそう。二人の大切な時間に割り込んでごめんね・・・と心の中でお詫びしつつ、隣で一緒に話を聞かせてもらいました。


(左)普段とはまた違った「牧先生」の顔。(中央)この日もなっちゃんは新しい研究成果を持参。牧先生のアドバイスに真剣に聞き入っています。ここでいつも新しい学びやひらめきがあるんだそう。(右)大好きな先生を目の前に、満面の笑顔!


(左)これがなっちゃんの研究ノート。自宅で行っている実験の結果や観察記録などをこのノートに書き留めているんです。中を開くと、研究者も顔負けの研究成果がぎっしり書き込まれています!(中央)理系がまるでダメな広報Bにも、わかりやすく説明してくれるなっちゃん。既に研究者の威厳あり!(右)研究ノート以外に、こんな「みつけノート」も。日々のいろんな発見や気づきをこのノートに書き留めています。


(左)この日は、チャレンジしたい実験コンクールの相談にきたなっちゃん。自ら挑む姿勢もすばらしい!(中央)「テーマは何にしようか?」。お母さんと広報Bも一緒になってワイワイ相談。(右)でも最後は、やっぱり頼りになる牧先生とじっくり話し合い。コンクール、良い実験が提出できたらいいね。

京大生に質問!コーナー

Q: 京大を選んだ理由は?

自宅が近くなので、小さな頃から大学構内を散歩したり、毎年夏にはグラウンドから大文字を観たりと、(勝手ながら)親近感を持っていました。京都大学で教鞭をとっていた曽祖父にあこがれて研究者を志したので、その空気に少しでも触れたくて京都大学を選びました。

Q: 京大の「ここが好き!」なところは?

懐が深い、というか、何をしてもどこかに受け皿があるという安心感があります。

例えば研究生活で急に英語で、あるいは大きな舞台で発表、という機会が時々あるのですが、「大丈夫?まあ、勉強しといで、ドーン」という感じで送り出してくれます。チャレンジすることに対して常に背中を押してもらえる環境が、一番の魅力です。

Q: 京大周辺のお気に入りスポットはどこ?

直接京都大学じゃないですが・・・哲学の道です。

研究に触れ始めてから特に思うのですが、とにかく周辺には哲学の道を含め鴨川やら、お寺やら、ふとした瞬間に落ち着けるスペースがたくさんあります。ぱっとリフレッシュできるのは研究生活を送る上でかなりありがたいです。

Q: あなたの学問領域、どういうところが魅力ですか?

機械工学だけでなく、生物物理学や発生生物学などさまざまな分野の学会に参加できるので、こんな切り口の研究方法もあるんだ・・・」「あの分野の勉強してみよう!」などなど、常にたくさんの刺激を受けることができます。

Q: 将来の夢は?

研究者です。特に、大学の研究施設等で研究したいと思っています。

Q: 1日のスケジュールってどんな感じ?

実験のあるなしでだいぶ変わります。

【実験のある日】

7時起床→ 8時~実験準備→ 12時半~昼ごはん→ 1時~実験準備→ 3時~実験(測定が長くかかるので、うまくいくか期待しながら機械の様子を見つつ、論文など読みつつ・・・)→ 12時帰宅

【実験のない日】

8時起床→ 9時~論文執筆など書き物→ 12時~ラボのメンバーで昼ごはん(後輩が毎日スーパーの特売品をチェックしてくれているので、買い! となればみんなでぞろぞろ買いに行く)→ 1時~実験データ整理・先生とのミーティング・発表の準備・数学の勉強・後輩の指導など→ 8時帰宅

勉学に、さまざまな活動に、積極的に取り組む現役京大生の姿、いかがでしたか?

「これが学びたい!」という前向きな向学心ある学生も、それに応えてくれる充実した環境も、大切な京大の宝物です。

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