シニアキャンパス 2006

シニアキャンパス 2006

交響する身体 -ひと・もの・自然の学びを編みなおす-

京都大学シニアキャンパス

ひとの身体は、それぞれの部分が固有の役割を果たしながら全体としてひとつの生命を形づくっています。それはあたかも美しいハーモニーを奏でている交響楽のようです。ひとが生きているように、ものも自然も生命を持ったひとつの身体に喩えることができます。ひとの身体の各パートが交響しあうとき、私たちは心地よさを感じますが、ひととひと、ひとともの、ひとと自然もまた、それぞれの身体どうしで互いに共鳴し、響きあうとき、無上の喜びがそこにはあります。

このような観点にたって、昨年、京都大学では、全学規模として初めて宿泊制のシニアキャンパスを実施しました。今回は、その続編として、「交響する身体―ひと・もの・自然の学びを編みなおす―」というテーマで、内容をさらに充実し実施することにしました。

自分の人生や身体を振り返ることは、シニアの特権でもあります。「シニア」とは、単に年齢を重ねたひとを表す言葉ではありません。それは、社会の中で生活者として経験を積んだ「人生の先輩」なのです。

英語でunlearn という言葉があります。この言葉は、学ばないということを意味するのではなく、かつて学んだことをもう一度新たな角度から学びなおしてみることを意味します。それは、ちょうど買ってきた既製のセーターを自分の身の丈にあわせるように、毛糸にほどいて、また編み直すような作業です。その作業は、手のかかる作業であるかもしれませんが、反面、確かな手応えとそこから生み出される喜びを感じ取ることができるはずです。

京都大学のシニアキャンパスは、まさにこのセーターの編み直しのような、学びの編なおしを提唱したいのです。本学のシニアキャンパスの講義やフィールド学習は、いたずらにより多くの知識を得てもらうことを勧めているのではありません。それよりも、自分の人生や自分の身体を、そして、自分とものや自然との関わりを、一度立ちどまって振り返ってみる―いわば学びのスタイルを考えてもらう場としてあります。

また、今回の特徴として、講義とフィールド学習が相互に関連し合っているところが挙げられます。ひと・もの・自然を全体的観点から研究を続けている講師陣の講義は、知的好奇心をかきたててくれることでしょう。また、身体全体を使うフィールド学習やゼミナールなどからも、これまでの人生のなかで自分のものにしてきた知を、もう一度自ら編みなおすきっかけにしてくれることを願ってやみません。

京都大学のシニアキャンパスは、すべての人に開かれています。人生という「私の大学」の中で学び続けてきた人との出会いを楽しみにしています。

また、受講者は、附属図書館(外部リンク)総合博物館(外部リンク)なども、期間中いつでも利用できるように開放されています。

2006年度