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ニュースリリース

がん遺伝子Mycを用いないiPS細胞誘導に成功
2007年12月1日

左から小柳 三千代 再生医科学研究所・産学連携研究員、中川 誠人 再生医科学研究所助教、 山中 伸弥教授 物質−細胞統合システム拠点/再生医科学研究所 教授


  山中 伸弥教授(物質−細胞統合システム拠点/再生医科学研究所)らの研究グループは、ヒトの皮膚細胞からES細胞(胚性幹細胞)と遜色のない能力をもった人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発に成功しましたが、このたび、がん遺伝子でもあるMyc以外の3因子により大人のマウスおよび成人皮膚細胞からiPS細胞の樹立に成功しました。
 この論文は、ロンドン時間の11月30日(金曜日)に英国科学誌「ネイチャーバイオテクノロジー」で発表されました。

【研究成果の概要】
 iPS細胞はマウスやヒトの皮膚細胞に4つの転写因子を導入することにより樹立される多能性幹細胞であり、胚性幹(ES)細胞と同様に、ほぼ無限に増殖すると共に、神経や心筋などの様々な細胞に分化できる。iPS細胞は患者自身の体細胞から樹立するため、倫理的問題が少ないし、移植後の拒絶反応も回避できる。しかし4因子の1つはがん遺伝子でもあるMycであることから安全性の問題が懸念される。実際、iPS細胞から作製したマウスにおいては、高頻度にMycの活性化による腫瘍が観察される。最近、私達を含む2つのグループがヒトiPS細胞の樹立を報告した。我々の方法は、マウスと同様にMycを含む4因子を使用しており、安全性が懸念される。他のグーループはMycを含まない4因子を用いて新生児の皮膚細胞からiPS細胞を樹立しているが、大人の皮膚細胞からは樹立に成功していない。
  今回我々は、Myc以外の3因子により大人のマウスおよび成人皮膚細胞からiPS細胞の樹立に成功した。Mycを用いて作製したマウスiPS細胞に由来するキメラマウス37匹中、6匹のマウスは生後100日までに腫瘍の形成により死亡した。一方、Mycを用いずに作製したiPS細胞に由来するキメラマウス26匹には、生後100日までに腫瘍による死亡は認められなかったことから、Mycを省略することにより安全性が向上することが明らかとなった。
  さらに私達は36歳女性の皮膚細胞から、Mycを用いずにiPS細胞を樹立することに成功した。大人の細胞に由来するiPS細胞は、新生児の細胞に由来するものに比べて、患者への自家移植を可能とすることから、より有用である。


ヒトiPS細胞



 朝日新聞(12月1日 1面)、京都新聞(12月1日 1面及び3面)、科学新聞11月30日 1面)、産経新聞(12月1日 3面)、しんぶん赤旗(11月12日 14面)、中日新聞(12月1日 1面)、日刊工業新聞(12月3日 19面)、日本経済新聞(12月1日 42面)、毎日新聞(12月1日 3面)及び読売新聞(11月30日夕刊 22面)に掲載されました。