<成果の具体的な説明>
A. Q値を動的に制御するための概念
まず、Q値を動的に制御するための基本概念を説明します。ナノ共振器は通常、図1(a)に模式的に示すように、光を出し入れするための導波路を伴っています。従って、ナノ共振器の光閉じ込めの強さQ値は、ナノ共振器から自由空間への光の漏れで決まると、ナノ共振器から導波路への光の漏れで決まるで決定されます。はナノ共振器の構造で決定され、動的に制御することは困難です。一方、は、周りの環境で変化させることが可能です。例えば、図1(b)に示すように、導波路の途中に反射鏡を置くと、共振器から導波路の左側へ漏れた光波(青色実線)と、共振器から導波路の右側へ漏れて反射鏡で反射されて戻ってきた光波(青色破線)が干渉するようになります。もし2つの光波の位相が同位相になる場合は、2つの波は強め合い、共振器から導波路へより光が漏れやすくなります。すなわちは小さくなります。一方、両者の位相が逆位相になる場合は、2つの光波は互いに打ち消し合い、結果として、共振器から導波路へ光が漏れなくなくなります。すなわち、を大きくすることが可能となります。このような光波の干渉を考えると、ナノ共振器のQ値は、以下の式で表されるようになります。
B. Q値の動的制御の実証
以上を実証するため、我々はポンプ-プローブ法と呼ばれる方法を採用しました。図1(c)に示すように、ポンプ光は導波路上部から導入し、θを変化させるために使います。すなわち、Q値の動的制御を行うために使います。一方、プローブ光はナノ共振器に導入される光のことで、Q値の動的変化が起こっているかを調べるために用います。ポンプ光とプローブ光を様々なタイミングで導入し、ナノ共振器から自由空間へと放出されるプローブ光の強度とスペクトルを測定することで、動的制御が起こったかどうかを調べることができます。ここでポンプ光が導入されない時θは零で、全体のQ値は最小値/2の値をとり、ポンプ光が導入された時θがπとなり、Q値が最大値となるとします。
Q値の動的変化が生じる理想の状態は、プローブ光が共振器に導入される時Q値が最小値となっており、プローブ光が共振器に導入されると同時に、ポンプ光によりθが急激に変化し、Q値が最大値へと変化することです。この時、光は共振器から導波路へ漏れることができなくなり、自由空間のみに放射されるようになるので、自由空間への放射光強度が最大になります。一方、もしプローブ光がポンプ光より早く来てしまうと、Q値は常に低いままとなります。従って、プローブ光は容易にナノ共振器に入りますが、同時にナノ共振器から導波路へ容易に漏れて行ってしまいます。従って、共振器から自由空間への放射光強度はあまり大きくなりません。一方、ポンプ光が先に来てしまうと、プローブ光が来る頃には、すでにQ値が最大値、すなわち十分高くなっているので、光はそもそも共振器へ導入されにくくなり、結果として共振器から自由空間へは光はほとんど放射されなくなります。