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ニュースリリース

アルケンの反応性を見分けるルテニウム触媒
2007年5月17日


  近藤 輝幸 工学研究科物質エネルギー化学専攻科学技術振興教授と浦 康之博士、辻田 寛博士らの研究グループは、0価ルテニウム錯体 Ru( -1,3,5-cyclooctatriene)( -dimethyl fumarate (図1) が、2種類および3種類の異なるアルケンを区別し、位置および立体選択的に共二量体および共三量体を得るための極めて有効な均一系触媒であることを明らかにしました。

 近藤 科学技術振興教授

 なお、これは、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「炭素資源の高度分子変換」の補助により行われた研究成果であり、ドイツの科学誌「Angewandte Chemie International Edition」電子版にVIP(Very Important Paper)として掲載されることが決まりました。目的生成物以外の副生成物が全く得られないことから、無駄のない環境にやさしい有機合成反応であることが評価されたと考えられます。

図1


研究成果の概要

 C=C二重結合を持つアルケンとC≡C三重結合を持つアルキンとは反応性が大きくことなるため、これら2つの不飽和化合物を結びつけることは、有機金属錯体を触媒に用いれば比較的容易であり、当研究室でもルテニウム錯体触媒を用いる方法を見出し既に報告している。一方、反応性が似通った2種類のアルケンを区別して、位置および立体選択的に規則正しく結びつけることは、スチレン類のエチレンによるヒドロビニル化反応、また当研究室で開発した 2-ノルボルネン類とアクリル酸誘導体、およびジヒドロフラン類とアクリル酸誘導体との共二量化反応を除けば、ほとんど成功例がなかった。さらに本研究では、2種類のアルケンの共二量化反応だけでなく、3種類のアルケンを規則正しく結びつける共三量化反応(共オリゴメリゼーション)の開発に初めて成功した(スキーム1)。これらの反応では、クロスカップリング反応等で問題となる塩等の副生成物が全く得られないので無駄がない。


スキーム1


  具体的には、N−ビニルアミド、アクリル酸エステル、エチレンという3種類のアルケンを原料に用い、0価ルテニウム錯体触媒 Ru( -1,3,5-cyclooctatriene)( -dimethyl fumarate 存在下、アルゴン雰囲気下で加熱、撹拌することにより、目的とする新規化合物「エナミド類」のみを合成することに成功した(スキーム2)。本反応の合成効率の高さ、環境負荷の低さは特記するものであり、21世紀の有機合成化学が目指すものに合致する。

スキーム2


  本研究で得られた「エナミド類」は、抗がん剤である「salicylihalamide A」や「lobatamide C」に含まれる重要な部分骨格であり、今回の手法が実用化されれば、こうした医薬品の少数段合成に役立つ可能性がある(図2)。

図2


  また、本研究で合成したエナミド類は、同一分子内にアミド基とエステル基を併せ持つ非常に極性の高い化合物であることから、これをさらに重合して3元交互共重合体を合成できれば(3種類のアルケン、ABCを混ぜて触媒を入れるだけで、‥‥ABCABC‥‥型のポリマーを合成すること)、高い屈折率や誘電率を示す新規ポリマーや、有機溶媒と水の両方に親和性を持つ両親媒性ポリマーの合成が可能となり、医薬品のDDS等に有効な先端材料としての高度利用が期待される。



 京都新聞(5月18日 3面)、日刊工業新聞(5月18日 24面)、日本経済新聞(5月18日 15面)及び毎日新聞(5月18日 2面)に掲載されました。