
左から森教授と清中 茂樹助教
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森 泰生 工学研究科合成・生物化学専攻教授らの研究グループは、神経細胞の電気的活動を神経伝達物質の放出に連関させるという、神経伝達に関する分子メカニズムを明らかにしました。これは、「認知」というような高次脳機能の解明等にも結びつくと期待され、さらには、Ca2+チャネルとRIM1との会合を維持させるメカニズムの研究により、認知症などにおいて見られる神経伝達物質放出の減少を抑え、症状を改善させるような薬剤の開発にも結びつくことが期待されます。
なお、この論文は 5月13日の英国科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に掲載されます。
研究成果の概要
神経細胞から次の神経細胞(或いは筋肉などの標的細胞)へと情報が伝わる「神経伝達」(neurotransmission)は、運動調節のみならず記憶、学習、感情などの高次の脳神経系の機能にとっても、必須の生体内情報伝達メカニズムである。神経伝達は、神経細胞間の接合構造「シナプス」において、神経伝達物質とよばれる化学物質によって仲介される。「神経伝達」は、神経伝達物質が一方の神経細胞(前シナプス)から標的細胞(後シナプス)へと放出されることにより進行するが、神経線維を伝播してきた「電気的活動」に正確に反応するために、前シナプスからの神経伝達物質の放出は厳密な制御を受けている。
最近、前シナプスにおいて、神経伝達物質を貯留するシナプス小胞から、効率的に神経伝達物質を放出させる神経細胞内構造として、シナプス小胞(active zone)が注目されている。シナプス小胞においては、シナプス小胞、電気的活動に反応してCa2+を流入させるシナプス小胞、さらには、このCa2+に反応してシナプス小胞から神経伝達物質を放出させる分子装置として働くタンパク質群が、集合していると考えられている。近年、その生理的重要性から、シナプス小胞のタンパク質分子解析が世界中で精力的に行われている。今回、私たちは、シナプス小胞において、RIM1とよばれるタンパク質とCa2+チャネルのβサブユニットとの会合体が、神経伝達物質を貯留するシナプス小胞をシナプス小胞の近傍につなぎとめる役割を担うことを明らかにした。また、RIM1がシナプス小胞に結合すると、Ca2+チャネルを介したCa2+流入が持続することがわかった。即ち、シナプス小胞においては、Ca2+チャネルがRIM1と会合することにより、シナプス小胞によるCa2+流入が持続され、すぐ近傍にあるシナプス小胞から神経伝達物質が十分量放出され、神経伝達が維持・増進されると考えられる(下図参照)。

図:RIM1とシナプス小胞会合による神経伝達物質放出の分子メカニズム
今回の研究成果は、神経細胞の電気的活動を神経伝達物質の放出に連関させるという、神経伝達に関する最も基本的な分子メカニズムを明らかにしたものである。また、非常に興味深いことに、RIM1タンパク質に変異を有する、かん体錐体ジストロフィーという遺伝性眼疾患患者において、認知機能が増進すると言う報告がなされており、「認知」というような高次脳機能の解明等にも結びつくと期待される。さらには、Ca2+チャネルとRIM1との会合を維持させるメカニズムの研究により、認知症などにおいて見られる神経伝達物質放出の減少を抑え、症状を改善させるような薬剤の開発にも結びつくことが期待される。
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