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ニュースリリース

◆研究の背景と概要


 植物は日長や温度などの環境からの情報を手がかりに花を咲かせる時期を決めている。その中でも日長は特に重要な環境要因であることが知られており、切り花としての菊の電照栽培などにも応用されている。

 日長を手がかりにして花芽の形成を開始する際に、植物は葉で光を感じ、葉の細胞が持つ体内時計を使って日長を計っていることが判っている。これまで、植物は適当な日長を受容すると、葉で何らかの物質をつくり、その物質が維管束(篩管)を通って芽に運ばれて、芽における花芽の形成を促すと考えられてきた。古く1937年に、この物質に対して「花成ホルモン」(フロリゲン)という名前が与えられたが、その後の研究にもかかわらずその実体は未知のままであった。

  今回の成果の最大のポイントは、研究チームが以前に発見したシロイヌナズナ(アブラナ科)のFT遺伝子*1(1999年にサイエンスに発表)と今回新たに見つけたFD遺伝子が葉における日長の受容と芽における花芽の形成を結びつける「橋渡し」の役割を演じていることを明らかにした点である。今回の成果はFT遺伝子からつくられるFTタンパク質が「花成ホルモン」である可能性を示すもので、永らく正体が未知であった「花成ホルモン」の解明につながると期待される。

  FT遺伝子はイネにおいても日長を手がかりにして花芽の形成を開始するのに関わっていることが知られており、研究チームがシロイヌナズナで明らかにしたのと同じことがイネやエンドウなどのほかの植物にも当てはまる可能性がある。複数の植物種に共通した「花成ホルモン」の解明により、作物・果樹や花卉植物などで花芽の形成を人為的に制御する方法の開発につながることが期待される。