ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー

本年3月15日に竣工・創設記念式典を開催し,学内外に開かれた全学の教育・研究施設として本格的な活動を始めた「京都大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(KU−VBL)」の概要を簡単に紹介したい。(式典の模様は京大広報512号に掲載)

最近,大学には知的創造・発信の場,将来の科学技術立国を先導する独創性豊かな人材の育成の場として,また昨今の日本経済の閉塞感を打ち破るものとして,これまでにない大きな期待が寄せられている。本施設は,こうした社会的要請を背景に,平成7年度の補正予算「科学技術・情報通信振興特別対策費」の中の新規産業創出につながる研究推進策としての「大学院を中心とした独創的研究開発推進経費」(VBL設立構想)により設立されたもので,その趣旨は

 1)将来の産業を支える基盤技術である研究開発プログラムの推進

 2)ベンチャー精神に富んだ創造的人材の育成

 3)専用の教育研究施設設備を整備

というものである。京都大学としては,全学的な検討を経て,「先進電子材料開発のための原子・分子アプローチ」を教育研究テーマに,工学研究科の電気系・化学系を主体に,理学研究科・化学研究所等の多数の教官からなる横断的で柔軟な組織でこのプロジェクトを推進している。

今回竣工したVBL棟(地下1階・地上3階,延べ面積2,000m2;写真−1参照)は本部構内の北東部に位置しており,国立大学の研究棟としては最初の免震構造を採用していることから建築学の面からも注目を集めている。(棟内外に振動計が多数設置されており,免震効果の実証・観測も行っている。)一方,VBL棟内に有機MBE装置(写真−2),in-situプラズマ・表面診断装置,ナノ構造試料作製・表面/光物性評価・薄膜構造解析装置,in-situ SPM装置,原子レベル構造観察,集積機能設計/シミュレーションシステム等の各種大型特別設備を設置するとともに,これまでの国立大学の建物には余り無かったようなリフレッシュコーナーやラウンジ(写真−3)が配置され,相互交流・憩いの場も提供している。

VBLの管理・運営組織は,全学の共同教育・研究施設としての位置づけから,図−1に示すように,総長を議長とする協議会には学内各研究科長等の他,関西を中心として,学外の学識経験者,経済界,ベンチャー企業・電気系企業のトップの方々に入って頂き,京大VBLの運営に対して外部評価とともに種々のご提案・ご協力を頂くことになっている。その下部組織として,施設長を委員長とする運営委員会を置き,実務は若手教官を主力メンバーとする運営小委員会(ワーキンググループ)が担当し,さらに,院生・PDのみからなる自主企画・行動委員会も形成されている。

このように,VBLはこれまでになくオープンな研究組織であり,学内はもとより,海外研究機関,他大学VBLとの連携,企業・官研究所(研究者)との共同研究を推進するとともに,特色ある院生教育を行うことにより起業家マインドを持った若手研究者の育成を目的としている。研究面でも,独創的研究を展開する中で,新産業,ベンチャー・ビジネスの創出に繋がるシーズを提供する計画である。

ただこうした成果を実際にベンチャー・ビジネスに繋げるには,知的所有権・資金等々の検討・解決すべき問題も多く,今後大学内および大学と企業等の連携研究成果に対する特許等の事務・運用を行う新たなシステムの構築が必要と思われる。既に文部省や通産省を中心にこうした課題に対して新規立法の動きもあり,この数年で大きく改善される事が期待される。また,本VBL施設は補正予算による施策であることから,その管理・運営には実務上の問題も多々あり,関係各位には種々ご配慮を頂いている。

本年度は,新産業創出に繋がるような独創的研究の推進のほか,定例セミナー及びミキサーを毎週月曜夕方に開催するほか,各種講演会・研究会,特許・創業講習会,院生・若手研究助成等を予定しており,学内外の多くの方に参加して頂く為にも,本VBLの設備,利用法,活動・研究内容や企画に関する情報発信をインターネット(http://www.vbl.kyoto-u.ac.jp/)等を利用して積極的に行うとともに,学内外の諸氏からも忌憚のないご意見・斬新なご提案を受け,真に創造的な人材の育成,そして画期的な研究成果・実績が得られるように本VBL関係者一同努力したいと考えている。

(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)

写真−1 VBL棟の外観

写真−2 クリーンルーム内に設置されたMBE装置

写真−3 VBL棟1階ラウンジ

図−1 VBL管理・運営組織

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