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輝け!京大スピリット

2019年春号

輝け! 京大スピリット

探検の必需品は〈知〉への欲求

探検部 プレジデント
中土井 洋平太さん 理学部3回生

熱帯がとにかく好きで、幼少期から関連の本を読みあさったという中土井さん。アマゾン渡航の夢は2回生で叶えた。「アマゾン川の船上で5日間過ごしました。『ついに熱帯にきた』と実感したのは、夜中にトイレに行ったとき。電球に集まる大量の虫をかき分け、床一面に散らばった虫の死骸のじゅうたんを踏みながら、『これぞ熱帯だ』と」

探検道具がひしめく部室。壁に貼られた模造紙には、「パプアニューギニア探検隊」の文字。中土井洋平太さんが挑むのは、憧れの熱帯地域、パプアニューギニア南部の未調査地域への遠征プロジェクトだ。

ニューギニア島内には、言語や慣習の異なる750以上の集団が暮らす。とりわけ南部地域は、移動経路の困難さや感染症の流行を理由に、調査の対象から外されることが多かった。「論文や紀行文をくまなく探しましたが、この地域に関する記述はゼロに近いんです」。中土井さんは2019年2月から、部員と3人で2か月間、数か所の村に滞在して、社会生活や文化を観察する。

「なによりの目標は、無事に生きて帰ること」。未調査の地域ゆえに、遭遇する危険も未知。マラリアやデング熱、致死的な毒を持つ蛇など、日本ではまず出会うことのない危険にみまわれるかもしれない。「数か月後にはこの世にいないかも、と不安に思うこともあります」。パプアニューギニアをフィールドとする研究者に片っ端から話を聞いて回ったり、あらゆる危険を想定して準備を重ねる。現地で10日間にわたる事前調査も済ませた。「国内の遠征でも、わずかな油断が命取りになる。探検部と隣り合わせの〈死〉の存在を意識し、『しっかりせな』と言い聞かせています」。

パプアニューギニアでは、カヌーに乗っての移動が基本。銅山の工業排水が原因で木が枯れるなど、熱帯雨林が破壊されているのが問題となっている

京都大学探検部の創設は1956年。定められた目的以外の海外渡航が禁じられていた時代に、未調査地域の学術探検を志した部員たちは数々の海外遠征にくり出した。1960年代の法律改正で、誰でも自由に海外旅行ができるようになってからは、学術調査は大学院生が時間をかけて取り組むものに変化。探検部もおのずとかたちを変えてきた。「活動内容を聞かれても、具体例を羅列するしかないんです」との言葉どおり、ロッククライミングや沢登り、カヌー体験などの野外活動、はたまた納豆、燻製、干し柿作りまで、部員の興味の数だけプランはある。「個人的に海外遠征に行く部員は多いのですが、今回のように部の承認を受けての長期間の海外遠征はおよそ10年ぶりです」。すでに、第2弾の海外遠征も計画されているという。

滋賀県の佐目風穴という洞窟。部員は自身の興味に応じたアウトドア活動を行なっている

定例の活動もなければ、活動内容の制約もない。部員たちそれぞれが挑戦したいことを企画し、仲間を募り、実践する。興味・関心や性格、行動様式もバラバラの部員たちを束ねる芯は「知的好奇心」。それがすべての活動の原点だ。「ここがブレないかぎり、どんな活動でも探検部だと言えるんです。誰に言われるでもなく、『知りたい』という純粋な好奇心で動く仲間の姿を見ると、『お前は何がしたいんや』と問われているように感じます。自らの奥底にある興味を探るのが探検の第一歩です」。

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