京都大学広報誌
京都大学広報誌『紅萠』

ホーム > 紅萠 > 施設・職員紹介

京都大学をささえる人びと

2018年秋号

京都大学をささえる人びと

図書館は知の宝物庫
扉は君にも開かれている

赤澤久弥さん
附属図書館(図書館企画課 課長補佐)

時計台の西側にある附属図書館をはじめ、京都大学には50もの図書館・図書室がある。約200名もの職員が、京都大学の教員や学生の研究・学習を日々サポートしている。多くの学生にとっては「自習の場所」としてなじみ深い存在だが、まだまだ知られていないことも。図書館運営をささえる裏方の目線から、大学図書館の役割とその可能性を語っていただいた

「図書館といえば、『静かにお勉強する場所』というイメージが根強い。でも、今はそれだけではありません」。こう断言するのは、図書館企画課の赤澤久弥さん。京大図書館に就職して以来、多岐にわたる図書館業務を経験した、この道ひとすじ23年のベテランだ。「静けさ」だけではない図書館を体現するかのように、快活な笑顔で、いきいきと語る。「ここ10年で、図書館のあり方はずいぶんと変わりました。〈オープン〉と〈発信〉が、現在の図書館を語るキーワードではないでしょうか」。

情報が行き来する場をめざす

わかりやすい例は、附属図書館一階の「ラーニング・コモンズ」。閲覧室とのあいだを仕切るのはガラスの壁。その奥に拡がる開放的な空間には、ディスカッションをする学生たちの姿があちこちに。口の前に人差し指をたてるポーズは、ここではふさわしくない。黙々と資料を読んでインプットする学習スタイルとは対照的に、たわいない雑談や議論などのアウトプットを通した新しい知見の創出が狙いだ。「先生の話をノートにとることも大事ですが、自分の考えを発信し、他人とアイデアを共有することも同様に大事。この図書館は、そのような新しいスタイルの学びに対応した環境づくりも担っています」。会話の途中にふとひらめき、調べものをしたいときはすぐに100万冊の蔵書にアクセスできる。厖大な資料を集積する〈場の利〉を最大限に活用できるのだ。

変化はこれだけではない。学内で新たに生み出された研究成果を誰でも読めるようにするのも、いまや図書館の仕事の一つ。紀要(大学が刊行する雑誌)や学内研究者の論文をオンラインで公開し、それを発信するためのプラットフォーム(京都大学学術情報リポジトリ『KURENAI』)も整備している。最近は学術雑誌が高騰し、購読することが難しくなっている。「学術情報の流通が滞ります。発信元である大学がそれらをオープンにすることで、誰もが無料で読めるようにしているんです」。

学内の論文のみならず、『ネイチャー』や『サイエンス』など世界的に著名な学術雑誌も出版社のウェブサイトからオンラインで閲覧可能。利用者は苦労することなく簡単にアクセスできる。この便利さは、その裏側をささえる人がいてこそ。図書館員が版元の出版社と交渉して購読契約を結んだり、検索用のデータベースを整備するなど、多くの人たちの手間のおかげで実現できるサービスなのだ。

主役は利用者

多岐にわたる図書館サービスの中で、これらの仕事はごく一部。論文になる一歩手前の研究データも、図書館で共有・発信することが検討されるなど、サービスの範囲はさらに拡がることが見込まれている。その一方で、サービスの受け手である学生の多くには、その全貌はあまり知られていないのが実状だ。「まったく図書館を利用せずに卒業する学生さんもいるかも。図書館では、資料や学術論文の探し方の定期講習会も頻繁に開催していますが、それらに参加していただくだけでレポートの作成がどれだけ楽になることか……」。図書館サービスについて語るときとは対照的に、眉が八の字になる赤澤さん。

「忘れてはいけないのは、私たちはあくまでも〈裏方〉ということ。学生さんの学びや教員の研究を支援することが仕事の根幹です。あまり表には出ないから、なかなか浸透しないのかも」。とはいえ、図書館をどんどん利用してほしいという熱い想いは、赤澤さんのみならず多くの図書館員が抱いていること。「学生さんからはよく、『こんなこと、訊いていいんですか』と言われます。声を大にして、『いいんですよ!』と言ってあげたい。利用者からの感謝のことばを励みに、私たち図書館員は日々仕事をしています」。

本や資料についてわからないことがあったら、ためらわず図書館に駆けこもう。解決への扉は、いつでも開かれているのだから。

夏休み子ども健康デーの様子

ラーニング・コモンズの様子。ホワイトボード、プロジェクターなどの設備を利用でき、ディスカッションがはかどる

ほかにもこんな取り組みが

富士川文庫の電子化事業
京都帝国大学で医学史の講義を行なったこともある富士川游博士から寄贈された、旧蔵書4,340余部9,000余冊の古医書コレクション。20年がかりで電子化を進め、2018年4月にすべてのタイトルの電子化・公開事業が完了した。

桂キャンパスの図書館建設
桂キャンパスで運営されている工学研究科の5つの図書室を集約し、新たな図書館の建設が決定。2020年春頃のオープン予定。

あかざわ・ひさや
1972年に長野県に生まれる。同志社大学文学部卒業後、京都大学内の複数の図書館および近隣国立大学の図書館勤務をへて、2017年4月から現職。

施設・職員紹介

関連リンク

関連タグ

facebook ツイート