2017年春号
輝け!京大スピリット「有朋自遠方来」
Nalaka GEEKIYANAGE(ナラカ ギーキヤナゲ)さん
大学院農学研究科 博士後期課程3回生
熱帯雨林の減少は、深刻な環境問題の一つに数えられる。熱帯雨林は地球上の二酸化炭素や熱、水の循環に多大な影響を与えているといわれるが、具体的なしくみは充分に解明されていない。それを森林生態学の視点で探ろうとするのが、ナラカさんの研究だ。「基本的に、森が好きなんです」。スリランカの村に生まれ、熱帯雨林をみぢかに感じて育ったナラカさん。光の差し込む研究室で植物を片手にうれしそうに思い出話を語ってくれた。「高い木から低い木まで、たくさんの種類の木が生えそろう熱帯雨林は、最高の遊び場でした」。
なぜ、熱帯雨林のない日本を留学先に選んだのだろうか。「日本の高度な研究環境に身を置き、すぐれた知識を身につけたいという思いもあったけれど、それ以上に魅力的だったのは、日本を中心に拡がるアジアの研究者どうしのつながり。これからの日本は、そのハブの役わりを担ってゆくはず」。
科学の発展にともないそれぞれの分野は専門性を増して、分野を横断した知を共有しづらくなっている。「次世代の『優れた研究者』とは、自分の専門分野以外の研究者と協働して研究をすすめられる人。ぼくも1人では遺伝子工学の研究はできないけれど、ネットワークが充実していれば、専門家に教えを乞うことだってできる」。そうしたネットワークは、アジアやアフリカなど、国自体が開発途上で、若手研究者を対象とした育成体制や科学技術が充実していない国ぐににこそ必要だ。しかも、現代には、テクノロジーの発展がもたらしたインターネットという武器がある。
彼はその思いから、いそがしい研究のあいまをぬって生態学を学ぶ世界中の若手研究者をつなぐ「INNGE*」の副議長を務める。INNGEは、研究活動に関わることだけでなく、研究者としての人生のことも相談でき、若手研究者どうしの助けあいの場所になりつつある。
「日本にきて困ったことは、母国とはあまりにもちがう気候くらいかな。とくに冬の寒さにはまいったよ」と、ことばとは裏腹にほがらかに笑う。こんごもさまざまな国の研究者と協力しながら、彼の研究はまだまだつづく。