「京都de冬の大学トーク」を開催しました。(2018年12月22日)

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「大学と社会が拓く未来の知」の第6回目として、「変革期のリーダーと民衆~維新のリーダー像の明と暗~」をテーマに「京都de冬の大学トーク」を、旧木戸孝允邸である職員会館かもがわにて開催しました。

本イベントは、大学の教育・研究の成果を広く一般の方々と共有することを目的とし、最新の研究成果を書籍の形で社会に発信している京都大学学術出版会、慶応義塾大学出版会との共催、および京都市、読売新聞社、活字文化推進会議の後援により、講演と討論の形で実施したもので、約70名の参加がありました。

イベントに先立って、旧木戸孝允邸見学会を実施しました。見学会では三重大学・大阪教育大学非常勤講師である齊藤紅葉 法学研究科研修員が解説を交えながら、旧木戸孝允の別邸と隣接する達磨堂を紹介し、参加者は齊藤研修員の解説に熱心に耳を傾けていました。

前半の部では、齊藤研修員が、「革命児のリーダーシップ~木戸孝允の明と暗~」と題し、これまで全生涯を通じた形では明らかにされていなかった木戸の政治思想について講演しました。特に、「上に権、下に自由」という確固たるリーダーシップこそが大衆の「公論」を育てるという木戸の信念が、幕末期には上手く活かされた一方で、明治維新以後は、政府による兵権掌握の不足などを背景に、必ずしも機能しなかったこと、その結果、自らが集権の先に見据えた「公論」の実現が遠のき、焦りと苦悩の内に病死した木戸孝允の挫折について紹介しました。

続いて、都倉武之 慶応義塾大学慶応義塾福澤研究センター准教授が、「挫折者としての福澤諭吉」をテーマに、今日あまり知られることのない「周縁」に身を置いた者としての福澤諭吉の実像を紹介しました。あえて「周縁」に身を置くことで、「中心」(政府や政治リーダー)が抱える問題を指摘し、「私立(私が立つこと)」の重要性を説いた福澤でしたが、その志を次の世代に継承することが出来なかったという福澤の「挫折者」としての苦悩が語られました。

後半の部では、前2名の講演を受けて、中西寛 法学研究科教授が、栄光と挫折の<二生>を生きた木戸と福澤の人物像を、彼らの国際認識という観点から評論しました。その後、講演者3名で討論を行い、西洋文明、特に個人主義が理想化されアジアに伝わる一方、その個人主義の解釈や移入の在り方に相違があったこと、二人の国家観・アジア観は、それに規定されたため、理想に終わったかも知れないという論点が示されました。

最後に、鈴木哲也 京都大学学術出版会専務理事・編集長が挨拶し、今日の変革期において求められる「公論」の活性化のためには、木戸や福澤が努めたように「知」を育むことこそが大切であること、そしてそうした「知」を育む場としての大学の役割を強調して結びました。

また、本トークイベントでは、山極壽一総長・京都大学学術出版会会長からのメッセージを紹介し、門川大作 京都市長からの祝電を披露しました。

左から、齋藤研修員、都倉准教授、中西教授

討論の様子

会場の様子

旧木戸孝允邸見学会の様子