細菌感染を感知してオートファジーを活性化させる仕組みを解明 -TBC1D9がカルシウムを感知してオートファジーを制御する-

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中川一路 医学研究科 教授らの研究グループは、細胞内に感染した病原細菌を分解するオートファジーが誘導される仕組みを明らかにしました。

オートファジー(自食作用)とは、細胞の中をオートファゴソームという膜で包み込み、その内容物を分解・再利用するシステムで、細胞の恒常性維持に重要な役割を担っています。さらに、細胞内に侵入した病原細菌なども選択的に分解します。細菌が感染した細胞では、TBK1と呼ばれるタンパク質が活性化し、活性化したTBK1が様々な分子を制御することでオートファジーが誘導されますが、TBK1がどのようなどのような仕組みで活性化するのかは不明でした。

今回の研究により、細菌が細胞内部へ侵入すると細胞内のカルシウム濃度が増加し、このカルシウムをTBC1D9とよばれるタンパク質が感知して細菌の周りに集まり、TBK1を活性化させることでオートファジーが誘導されていることが明らかになりました。本研究成果は、新たな細菌感染症治療法の開発ための重要な一歩と言えます。

本研究成果は、2020年2月7日に、国際学術誌「Nature communications」のオンライン版に掲載されました。

図:細菌感染に対するオートファジー活性化のモデル

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-020-14533-4

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250513

Takashi Nozawa, Shunsuke Sano, Atsuko Minowa-Nozawa, Hirotaka Toh, Shintaro Nakajima, Kazunori Murase, Chihiro Aikawa & Ichiro Nakagawa (2020). TBC1D9 regulates TBK1 activation through Ca2+ signaling in selective autophagy. Nature Communications, 11:770.

  • 日刊工業新聞(6月4日 19面)に掲載されました。