テラヘルツ帯における反強磁性体磁化ダイナミクスによるスピン流変換を実証 -テラヘルツスピントロニクスへ筋道-

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森山貴広 化学研究所 准教授、小野輝男 同教授らの研究グループは、林兼輔 岐阜大学 博士課程学生、山田啓介 同助教、嶋睦宏 同教授、大矢豊 同教授、Yaroslav Tserkovnyak カリフォルニア大学ロサンゼルス校 教授らの研究グループと共同で、テラヘルツ帯の反強磁性共鳴によるスピンポンピング効果(磁化ダイナミクスからスピン流への変換現象)を実証しました。

これまでスピンポンピング効果は、強磁性体におけるギガヘルツ帯の磁化ダイナミクスに付随して観測されていましたが、2桁以上周波数が高いテラヘルツ帯の磁化ダイナミクスを有する反強磁性体では観測されていませんでした。本研究では、反強磁性体である酸化ニッケル中に重金属(HM、白金PtやパラジウムPd)粒子を様々な割合で分散させたグラニュラー構造物質((NiO) 1- x HM x )のテラヘルツ透過吸収測定を行い、その共鳴スペクトル線幅の変化からスピンポンピング効果を実証し、その多寡を見積もりました。

本研究成果は、テラヘルツ帯においても、磁化ダイナミクスからスピン流への変換現象を利用できることを示唆するものです。今後、反強磁性体を利用した、テラヘルツ帯で動作可能なスピントロニクスデバイスへの応用が期待されます。

本研究成果は、2020年2月5日に、国際学術誌「Physical Review B:Rapid Communications」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1103/PhysRevB.101.060402

Takahiro Moriyama, Kensuke Hayashi, Keisuke Yamada, Mutsuhiro Shima, Yutaka Ohya, Yaroslav Tserkovnyak, and Teruo Ono (2020). Enhanced antiferromagnetic resonance linewidth in NiO/Pt and NiO/Pd. Physical Review B, 101(6):060402.