ボノボの孫作り競争を父子判定研究で証明

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古市剛史 霊長類研究所教授らの研究グループは、Martin Surbeck マックスプランク研究所博士らと協力し、4つの地域のボノボと7つの地域のチンパンジーで合計302頭の子供について父親のDNA鑑定を行った結果、ボノボでは集団内に母親がいるオスが母親を高齢死亡等により失ったオスよりも高い繁殖成功を収めているのに対し、チンパンジーでは同じ傾向は見られないことを見出しました。

チンパンジーとボノボは、系統的にヒトにもっとも近いアフリカ大型類人猿です。これら2種はともに父系社会をつくる近縁種でありながら、大きく異なる社会性を見せます。オスが圧倒的に優位なチンパンジーでは、オスが集団の動きを決め、オス間の力関係によって第1位のオスが決まります。ところがボノボでは、メスの地位がオスと同等以上に高く、集団の動きも中心部に集まるメスたちが決めます。さらに、第1位のメスの息子がオスの第1位になることが多く、息子たちは母親がいる場所でより多く交尾の機会を得ることが観察され、ボノボのメスたちは息子を通じた孫作り競争をしていると予想されてきました。

本研究は、ヒトの本性の様々な側面の進化の解明に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2019年5月20日に、国際学術誌「Current Biology」のオンライン版に掲載されました。

図:高齢の第1位のメスである母親(中央)に寄り添う第1位のオス(右)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.cub.2019.03.040

Martin Surbeck, Christophe Boesch, Catherine Crockford, Melissa Emery Thompson, Takeshi Furuichi, Barbara Fruth, Gottfried Hohmann, Shintaro Ishizuka, Zarin Machanda, Martin N. Muller, Anne Pusey, Tetsuya Sakamaki, Nahoko Tokuyama, Kara Walker, Richard Wrangham, Emily Wroblewski, Klaus Zuberbühler, Linda Vigilant, Kevin Langergraber (2019). Males with a mother living in their group have higher paternity success in bonobos but not chimpanzees. Current Biology, 29(10), R354-R355.

  • 京都新聞(7月9日 27面)、日本経済新聞(9月24日夕刊 14面)および読売新聞(7月5日 31面)に掲載されました。