PGE2経路による病因細胞Th17の増殖機構を解明 -乾癬の慢性的な皮膚炎症を改善する新しい治療薬開発に向けて-

ターゲット
公開日

成宮周 名誉教授(医学研究科特任教授)、タムケオ・ディーン 医学研究科特定准教授、李震珠 同博士課程学生(現・ソウル峨山医療センター研究員)らの研究グループは、急性炎症症状の発現に関わる生理活性物質プロスタグランジンE2(PGE2)から、そのふたつの受容体EP2・EP4、そしてcAMP(環状アデノ一リン酸)に至るシグナル伝達経路(PGE2-EP2/EP4-cAMP)が、炎症関連分子サイトカインのひとつIL-23と協調して働き、さまざまな自己免疫疾患や慢性炎症の病因細胞であるTh17細胞の増幅を促進する分子機構を明らかにしました。

また、本研究グループは、IL-23の皮下投与による乾癬のモデル動物を用い、EP2/EP4の遺伝子欠損または薬理学的阻害が、皮膚に慢性の炎症を起こす乾癬の病態を強く抑制することを見出しました。

本研究で見出されたEP2/EP4拮抗剤は、IL-23産生に至るまでの細胞内シグナル伝達経路に作用し、IL-23の産生自体を抑制することにより炎症の原因細胞であるTh17細胞の増幅も抑え、乾癬の皮膚炎症状態を改善させる作用があります。そのため、現在、臨床で用いられている治療薬(抗IL-23抗体)に比べて、より効果的な治療薬となる可能性があります。

本研究成果は、2018年6月20日に、国際学術誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」のオンライン版に掲載されました。

図:Th17細胞の増幅におけるPGE2-EP2/4の作用機序(モデル)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.jaci.2018.05.036

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/236490

Jinju Lee, Tomohiro Aoki, Dean Thumkeo, Ratklao Siriwach, Chengcan Yao, Shuh Narumiya (2019). T cell-intrinsic prostaglandin E2-EP2/EP4 signaling is critical in pathogenic TH17 cell-driven inflammation. Journal of Allergy and Clinical Immunology, 143(2), 631-643.