マウスとハエに共通にみられる体温の日内リズムを制御する仕組み

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土居雅夫 薬学研究科准教授、岡村均 同教授、合田忠弘 米国シンシナティ大学小児病院博士研究員、濱田文香 同准教授らの研究グループは、体温の日内リズムを制御する仕組みにG蛋白質共役受容体の一つであるカルシトニン受容体が重要な役割を担うことを示し、それがマウスとハエのどちらの生物種でも共通にみられる、進化的に保存された仕組みであることを明らかにしました。

本研究成果は、2018年2月13日午前5時に米国の科学誌「Genes & Development」に掲載されました。

研究者からのコメント

マウスは恒温動物であり、ショウジョウバエは変温動物ですので、その体温調節を担う仕組みは根本的に異なると考えられていましたが、体温の日内変動パターンを生み出す仕組みはマウスとハエでどちらも共通のカルシトニン受容体を介した体内時計からの神経シグナルが重要であるということを明らかにしました。

哺乳類の祖先と昆虫の祖先は6億年以上前に分かれたとされますが、当時すでにその祖先はカルシトニン受容体を介した体温制御によって地球環境の昼夜に適応していた可能性が高いと考えられます。

概要

恒温動物は、恒温といっても、四六時中体温が一定であるということではありません。ヒトもマウスも体温には顕著な日周リズムが見られます。体温は一日の中でも活発な活動期に合わせて上昇し、休息期には低下します。外気温には左右されませんが、恒温動物には自律的に体温の日内制御を行う仕組みがあります。

一方、小型の変温動物であるハエは、非常に敏感に外気温に影響されるため、自らが至適な温度環境下へ移動し、外部からの熱を取り込むことで体温を制御します。一日の中でも活発な活動期にはハエは高い温度環境を好み、反対に休息期には低い温度を好みます。このような温度選択リズムによってハエは体温のリズムを生み出すのです。

こうしてみると、マウスとハエとでは恒温動物と変温動物の違いはありますが、一日の時間帯に応じて体温を上げ下げするという点では共通することが分かります。しかし、これまで恒温動物と変温動物に共通する体温制御の仕組みは全く知られていませんでした。

本研究グループは、マウス・ハエどちらの生物種においても体温の日内制御に関与する共通のG蛋白質共役受容体が存在することを明らかにしました。進化的に保存された動物の体温制御のメカニズムとその生物学的意義の解明に向け、最初の突破口を開く重要な所見を提供したといえます。

図:マウスとハエの活動期の体温制御を担うカルシトニン受容体。DH31受容体は哺乳類のカルシトニン受容体に相当するハエの受容体である。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1101/gad.307884.117

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/229398

Tadahiro Goda, Masao Doi, Yujiro Umezaki, Iori Murai, Hiroyuki Shimatani, Michelle L. Chu, Victoria H. Nguyen, Hitoshi Okamura and Fumika N. Hamada (2018). Calcitonin receptors are ancient modulators for rhythms of preferential temperature in insects and body temperature in mammals. Genes & Development, 32(2), 140-155.

  • 朝日新聞(2月14日 33面)、京都新聞(2月14日 1面)および読売新聞(2月17日夕刊 12面)に掲載されました。