高効率スクリーニングによる新しい2価スズ酸化物系光触媒材料の発見

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林博之 工学研究科助教、田中功 同教授、大場史康 東京工業大学教授、壬生攻 名古屋工業大学教授らの研究グループは、新しい2価スズ(以下、Sn( II ))酸化物系光触媒材料を発見しました。

本研究成果はドイツの科学誌「Advanced Science」誌に2016年9月8日、オンライン掲載されました。

研究者からのコメント

SnMoO 4 はこれまでに合成報告がなく、結晶構造も未知でしたが、本研究グループではピンポイントでの物質合成と光触媒活性の実験に取り組み、この物質が計算により予測されたとおりの結晶構造を持ち、優れた光触媒特性を示すことを実証しました。本研究の成功は、このような理論計算主導での物質探索の有効性を確認したものです。今後は、光触媒分野に限らず、汎用的・効率的な材料開発技術としての重要性を大きく増すものと期待されます。

概要

紫外光だけでなく可視光でも高い活性を示す光触媒の開発は環境・エネルギー問題に配慮した持続可能型社会の実現のために重要だとされています。

すでにさまざまな物質が可視光応答型光触媒として報告されてきましたが、近年になり、特に高い光触媒能が報告されている化合物として、BiVO 4 、SnNb 2 O 6 、SnWO 4 など価電子として1原子あたり二つのs電子を持つBi( III )やSn( II )の複合酸化物が注目されています。

しかしこれらの物質は、膨大な実験によるスクリーニングの結果見いだされたものであり、物質探索に多大なコストと時間がかかっていました。

本研究では、これまで報告例の少ないSn( II )に注目し、周期表の4A(Ti、 Zr、 Hf)、5A(V、 Nb、 Ta)、6A(Cr、 Mo、 W)の各元素との三元系複合酸化物を対象として第一原理計算を系統的に実施することで、熱力学的安定性や物性を予測し、高効率にスクリーニングしました。そして、計算結果をもとにピンポイントでの的確な物質合成と光触媒活性の実験に取り組み、優れた光触媒特性を実証しました。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
http://dx.doi.org/10.1002/advs.201600246

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/216587

Hiroyuki Hayashi, Shota Katayama, Takahiro Komura, Yoyo Hinuma, Tomoyasu Yokoyama, Ko Mibu, Fumiyasu Oba, and Isao Tanaka. (2016). Discovery of a Novel Sn(II)-Based Oxide β-SnMoO4 for Daylight-Driven Photocatalysis. Advanced Science, 1600246.

  • 科学新聞(9月9日 6面)に掲載されました。