日食を利用して太陽光が大気中のオゾンへ与える影響を調査

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高橋けんし 生存圏研究所准教授、塩谷雅人 同教授、今井弘二 宇宙航空研究開発機構研究員らの共同研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)の高精度な観測データを用いて、2010年1月15日に起こった日食時のオゾン量の変化を調べました。すると、月の影で暗くなっている地域では、明るい地域に比べて、中間圏のオゾン量が多くなっていることがわかりました。

本研究成果は米国地球物理学連合発行の学術誌「Geophysical Research Letters」オンライン版に5月7日付けで掲載されました。

研究者からのコメント

人工衛星センサーSMILESに結集された日本発の高い技術力が、日食という珍しい「好機」に恵まれたことよって、定量的な理解に乏しかった中間圏オゾン濃度を支配する光化学過程を精密に解析できることを見出しました。SMILESの精密なデータは、日食時以外のオゾンはもちろん、オゾン濃度に強く影響するラジカルと呼ばれる化学種についても得られており、大気中のオゾン濃度が将来的にどうなっていくのか? という重要な問題にも詳しい知見をもたらすと期待されます。

概要

太陽の光量(明るさ)の変化は、地球大気中のオゾンにどのような影響を与えるのでしょうか? これまでの観測は、精度が悪く、太陽の明るさが変わることで、オゾン量がどのように変化するのかについての考察ができませんでした。

共同研究チームが国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)の高精度な観測データを用いて、2010年1月15日に起こった日食時のオゾン量の変化を調べた結果、月の影で暗くなっている地域では、明るい地域に比べて、中間圏のオゾン量が多くなっていることがわかりました(図)。またその変化の様子は地表からの高度によって異なっていることもわかりました。本研究は日食を利用することによって、太陽光量の変化のみが大気中のオゾンに与える影響を示した重要な成果です。


日食時のSMILESの観測の様子

矢印はSMILESの観測が進む方向を示している。点はSMILESの観測点で、色は高度64km(中間圏)でのオゾン混合比を示している。

詳しい研究内容について

日食を利用して太陽光が大気中のオゾンへ与える影響を調査

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1002/2015GL063323

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/198466

Koji Imai, Takashi Imamura, Kenshi Takahashi, Hideharu Akiyoshi, Yousuke Yamashita, Makoto Suzuki, Ken Ebisawa, Masato Shiotani
"SMILES observations of mesospheric ozone during the solar eclipse"
Geophysical Research Letters 42(9), pp. 3576–3582, 16 May 2015

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