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古代・中世の東西回廊 -ミャンマーからタイ・カンボジアに至る歴史街道が明らかに

2013年9月18日


左から柴山特任教授、柳澤准教授、Elizabeth 客員研究員

 柴山守 地域研究統合情報センター特任教授、柳澤雅之 同准教授、Elizabeth Howard Moore 東南アジア研究所客員研究員(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)教授)らのグループが進める「東西回廊プロジェクト」で、ミャンマーからタイ・カンボジアに至る大陸部東南アジアの、古代から近世に至る統治・仏教文化・交易などで交流のあった歴史街道-東西回廊が明らかになりました。

ポイント

  • GIS(地理情報システム)によるコンピュータ分析で解明
  • 12月10日から本学で開催される国際会議で発表
  • 国際学術調査団を編成し、次年2月末にGIS分析にもとづくダウェイ・カンチャナブリー間での初めての国境を跨ぐ陸路の本格的臨地踏査を目指す。(国際学術調査団は、本学のほかTRFタイ国研究基金、CRMAタイ国チュラ チョムクラオ陸軍士官学校、英国ロンドン大学SOAS、およびミャンマー国教育省・文化省、ヤンゴン大学、APSARAカンボジア・シエムリアップ・アンコール遺跡保存局の関係者で構成され、ベトナムからの考古学者が加わる。)


図1:タイ全土遺跡データ(7,400箇所)を歴史軸でみる

概要

 ミャンマー・タイ・カンボジア・英国の国際連携による研究者で進める本プロジェクトでは、日本側リーダーである柴山特任教授によるGIS(地理情報システム)をもちいたコンピュータ分析で、今まで謎であった歴史街道が浮上しました。先行研究やフィールド調査によって得られた資料、証拠群などを歴史(時間)軸および地理空間的な視点でリンクし、地域情報学の手法による最新のGIS分析にもとづいて解明しました。GIS分析は、従来の学説や資料を参照するのみならず、最近入手したミャンマー遺跡リスト約430件の一部および初めて公開されたタイ国内全土の先史時代から近世にいたる遺跡リスト約7,400箇所にもとづきます。東西回廊説は、故石井米雄 名誉教授(文化功労者)が、スコータイ期(13~14世紀)のミャンマー・マルタバンからタイ・ターク県メソットを経て、スコータイに至るルートの仮説を2009年東南アジア学会で発表したのが始まりです。

 本プロジェクトは、東南アジア研究所共同利用・共同研究拠点-IPCR東南アジアの国際共同研究拠点のもとで、地域研究統合情報センターがミッションの一つである地域情報学プロジェクトの一環として、2012年から本格的な調査・研究を始めました。

 これまでの研究から、スコータイ期のみならず、旧ビルマのマルタバン周辺に位置したモン族は、6世紀頃にはペグー(Pegu)やタトン(Thaton)で独立した国家を形成しました。タイではモン族によるドヴァーラヴァティ朝(6~10世紀)が栄えます。その後のクメール帝国の統治、スコータイ朝、アユタヤ朝と複雑な時代変遷をGIS分析し、現在のミャンマー、タイ、カンボジアを貫く東西回廊と、時代ごとに変遷するタイ国内での「南北回廊」が明らかになりました。

 さらに、近世から近代に至る諸資料、英領ビルマ(1820年代)の植民地統治のための英国官吏によるミャンマーからタイ・中国雲南省に至る民族学的調査団のルート、旧日本軍第39師団のミャンマーからタイに至るルート、1943年連合軍によるミャンマーからタイに至る軍事ルート、秘密文書なども同様にGIS分析を行って、古代・中世の東西回廊の推定に役立てました。

 


図2:クメール朝「ロッブリ-遺跡」分布と回廊の推定(9~15世紀) (GIS分析)


図3:スコータイ期における回廊推定(13~15世紀 )東西回廊と南北回廊 (GIS分析)


図4:アユタヤ遺跡と回廊の推定(14~18世紀 )東西回廊と南北回廊 (GIS分析)

 

今後の予定

 本プロジェクトの詳細は、2013年12月9日~14日まで百周年時計台記念館で開催される人文学とコンピュータをテーマとするPNC(Pacific Neighborhood Consortium)と地域研究統合情報センター、東南アジア研究所、情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会、大学共同利用機関法人人間文化研究機構などが主催・共催するPNC Annual Conference and Joint Meetings 2013国際会議で発表を予定しています。

 本国際会議の期間中2013年12月11日には、ミャンマー文化省ウータンスェー副大臣のほか、英国、タイ、ベトナムから国際学術調査団の一部研究者が発表を行い、石澤良昭 上智大学教授(同元学長)による基調講演を予定しています。

 その後、2014年2月23日から28日まで、タイ・カンチャナブリー県から国境を跨いでミャンマー・ダウェイに至る陸路の本格的な調査を行います。ミャンマー・タイ国境のうち、当該国境は、最近になって通交が可能になったところで、安全性の確認をも含みます。次年2月下旬にはミャンマー・タイ両国の考古学を学ぶ学生たちとともに本格的調査にのりだし、ダウェイ近郊に位置するタガラ(Thagara)遺跡、モッティ(Mokti)遺跡の調査を行い、ダウェイ・カンチャナブリー・ルートの解明を踏査で実施します。その後、マルタバンからメソットに至るルート、モン族の位置するスワナブミ(Suvannabhumi:黄金の地)、タイ国内の東西回廊に関係する遺跡等の調査を順次実施します。

 

  • 朝日新聞(9月19日 33面)、京都新聞(9月19日 24面)、中日新聞(10月13日滋賀版 25面)および毎日新聞(9月26日 27面)に掲載されました。