京大の「実は!」Vol.29 「京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)のアウトリーチ活動の実は!」

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 iPS細胞。みなさん、きっと一度は耳にしたことがあるはずですよね。

 ご存知、京大の山中伸弥教授が世界で初めて作製に成功し、ノーベル賞を受賞したことで一躍有名になった細胞です。

 では、iPS細胞ってなに? 初期化ってどういうこと?・・・

 聞いたことはあるけれど、イマイチなんだかわからない!

 そんな人たちのために、もっと楽しく、身近に、そして正しくiPS細胞を知ってもらおう。それを目指してiPS細胞研究所では、一般の方向けに、実はさまざまなアウトリーチ活動を行っているんです。

 今回は、研究だけじゃない! iPS細胞研究所の知られざる活動に迫ります!

 

「iPS細胞研究所」ってどんなところ?

 京都大学iPS細胞研究所(CiRA:Center for iPS Cell Research and Application)は、2010年4月に附置研究所の一つとして設置されました。現所長は、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、山中伸弥教授です。

 現在、同研究所では、「初期化機構研究部門(6月1日より「未来生命科学開拓部門」に改称)」「増殖分化機構研究部門」「臨床応用研究部門」「基盤技術研究部門」「上廣倫理研究部門」の五つの部門が設置されており、さまざまな側面からiPS細胞研究に取り組んでいます。

 研究棟内部は日本国内ではまだ珍しかったオープンラボ構造をとっています。ワンフロアが一つの大きな部屋となっており、研究室ごとの壁はなく、その中でさまざまなグループによる連携が生まれています。開設当初は150名だったメンバーも今では300名を超える大所帯となり、2015年の春には第二研究棟が完成しました。

iPS細胞研究所が、大阪のど真ん中にやってきた! 出張CiRAカフェ『iPS夜話』

 まずご紹介するのは、一般の方を対象に、iPS細胞研究を身近に感じてもらうことを目的に開催している「CiRAカフェ」。

 iPS細胞研究の第一線で活躍する京大の現役研究者が、カフェのようなカジュアルな雰囲気の中、「iPS細胞が持つ特徴の解明」、「iPS細胞による再生医療の実現」、「薬の開発への応用」など、さまざまな角度からiPS細胞が持つ可能性について解説するプログラム。

 いつもは同研究所内で開かれていたCiRAカフェ、「iPS細胞をもっと身近に感じていただくため、大阪周辺をはじめ、関西の方々に広く参加してもらいたい!」という思いから、大阪駅直結「グランフロント大阪」に初出張することに!

 ・・・ということで、広報Bが第1回のレポートに行ってきました!

ナレッジキャピタル「超」学校シリーズ
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)× KNOWLEDGE CAPITAL「出張CiRAカフェ『iPS夜話』」

第1回 4月24日(金)「細胞のエラーを見つけよう!」
第2回 8月26 日(水)「元気な免疫細胞を再生して体を守る」(募集は8月頃予定)
第3回 12月18日(金)「新しい薬の見つけ方」(募集は12月頃予定)

 

第1回:「細胞のエラーを見つけよう!」
   (講師:渡辺 亮 iPS細胞研究所 初期化機構研究部門助教)

 会場は、グランフロント大阪北館ナレッジキャピタル1F 「カフェラボ」です。

 カフェラボは、ナレッジキャピタル内外に対して、コミュニケーションの渦を起こす拠点となるような新しいスタイルのコミュニケーションカフェです。
人や文化・情報など、今までつながりがなかったものを結びつける、新たな気づきと出会いに満ちた場所。

広々とした明るい空間。好立地で、多用途で活用可能。

電子書籍コーナーなど、目的に応じて多様なスペースがあります。

 

 今回は、この広々とした開放的なカフェの一角にあるエキシビジョンスペースを使っての講座です。研究所とはひと味違う、なんともオシャレな雰囲気!

話題の書籍が揃った書籍コーナー。山中先生の本もありました!

JR大阪駅に直結という好立地のためか、年齢層は幅広く、仕事帰りのビジネスマンや制服姿の学生さんも見られました。

 

まずは初歩のレクチャーから。「iPS細胞とは?」

 まずは、CiRA国際広報室のサイエンスコニュニケーター、野口悦さんから、iPS細胞研究所についての紹介と、「iPS細胞とは?」についての基本のレクチャーからスタート。

 iPS細胞って何?どのようにして作るの?・・・などをスライドを使ってわかりやすく説明。

 また、iPS細胞が「再生医療」と「創薬」の分野でどのように活用できるのか、その可能性についてもお話してくださいました。

 そして、メインの渡辺先生のトークへ。

「ゲノムの配列解析によって、変異のないiPS細胞を選べば、癌化のリスクは少なくなる!」

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 2014年、iPS細胞から作った細胞が初めてヒトに移植されました。

 移植する際には、性質や安全性の面で優れた細胞を用いることが必要不可欠。

 渡辺先生の研究グループでは、移植用として品質の保証されたiPS細胞を提供することができるように、ゲノムやエピゲノムの解析を行い、真の臨床応用が可能なiPS細胞を厳密に評価する方法を開発しています。

 移植する細胞として安全なiPS細胞、良いiPS細胞ってどういうもの? その選び方とは?・・・

 そんな不思議を渡辺先生がわかりやすく解説してくださいました。

この日の参加者は46名。渡辺先生のわかりやすいトークに、みなさん引き込まれていました。

この日は若い女性も多く参加。幅広い層の人が、iPS細胞に興味関心を持っているんですね。

みなさん、真剣にノートをとっているのがとても印象的でした!

 

 iPS細胞は半永久的に増やすことができ、またどんな細胞にでも変身することができる細胞です。大きな可能性を秘めており、再生医療などで広く使われようとしています。だからこそ、「安全な」iPS細胞を使うことが何よりも重要!

 「安全な細胞=癌化のリスクの少ない細胞を選ぶ」ことだと渡辺先生は言います。

 「ヒト」である基本的なことは「ゲノム」が決めています。
 ヒトは99%の遺伝子情報が同じ。この遺伝子に傷が入ること(ゲノム変異)で癌になってしまうんだそうです。

 そのため、iPS細胞になる過程でゲノムに変異が入ると、癌化のリスクが発生します。その違いをみつけるために、渡辺先生の研究グループではゲノムの配列を比較して、必ず細胞の安全性を確認しているのです。

途中には、正常なDNAと癌のDNAの配列記号がずらりと並んだ紙の中から、違う部分を探し出すクイズ形式のゲームも。

正解はココ!この違いをみつけるのは難しい・・・。たった一つの配列の違いで癌を発症するなんて、人間の身体って本当に不思議です。

 

 膨大な情報量の中から、その違いを探し出すのは実に難しいこと。iPS細胞というと、まずその活用のされ方や可能性ばかりに注目が集まりがちですが、その前のステップとして、「安全で有効なiPS細胞を作製する」という工程がとても重要なんですね。

 再生医療の分野で大きな可能性をもつiPS細胞ですが、こういったさまざまな研究部門が一体となって初めて、実現への一歩を進むことができるんです。
 大きな成果の背景には、それを支えるたくさんの重要な研究があります。どれも大事なんだ!としみじみ感じる広報Bでした。

 次回の出張CiRAカフェは、8月26 日に実施予定です。(募集開始は8月頃を予定。詳しくはナレッジキャピタルHPをご参照ください)

イベント参加者の声をご紹介します!
  • 場所が便利だし、おしゃれでよい。
  • 興味深いお話を聴くことができました。大学での勉強におけるモチベーションにつながりました。ありがとうございました。
  • 私は一卵性双生児なのですごく身近に思えました。
  • ヒトがどのように発生するか、という研究もやっているということに興味を持ちました。
  • 校外学習で京大の研究所へ行った時は、ただの建物ぐらいにしか思わなかったけれど、今は身近に感じられます。
  • 説明もスライドもとても分かりやすかったです。専門用語がすくなかったので、理解しやすかったです。
  • 先生のお話がおもしろく、勉強になりました。学校で習ったこともたくさんでてきたのでよかったです。
  • 第一線の研究者の考えていることが少し分かった気がした。
  • iPS細胞の持つ大きな可能性について感じることができた。
  • 医療へのアプローチ、つながりをわかりやすく説明して下さった。

 

ゲーム感覚でiPS細胞について学べる! iPad用ゲーム「iPS MASTER」

 先生の話を座ってじっくり学ぶ講座も興味はあるけど・・・
 もっと楽しみながら・・・そう、それこそゲーム感覚でiPS細胞について学びたい!

 そんな人にもってこいな方法、ありますよ!

 実は、iPS細胞がどのようにつくられたかを楽しく正しく学べるiPad用ゲーム「iPS MASTER」があるんです。

「iPS MASTER」。イラストもそれぞれ本人にそっくり!

これであなたも「iPSマスター」!?  山中研究室の一員になって、iPS細胞を開発しよう!

 「iPS MASTER」は、iPS細胞がどのように開発されたかを楽しく学べるタブレット端末iPad用のゲーム。同研究所副所長の高橋淳教授の監修のもと制作されました。現在は、研究所内に設置されているタブレットでのみ体験することができます。

 iPS細胞の生みの親、同研究所所長の山中伸弥教授をはじめ、そのアシスタントとして高橋和利講師らがアニメで登場。ゲーム参加者自身も研究室の一員となり、iPS細胞の誕生までの経緯を追体験できるストーリー仕立てになっています。

CiRAのエントランスを入って右側は、一般の方にも閲覧可能なギャラリーになっています。そのすぐ手前に「iPS MASTER」のタブレットが設置されています。

一般の方でも自由に体験できる「iPS MASTER」。

 

広報Bも「iPS MASTER」を体験しました!

 国際広報室の和田濱裕之さんの手ほどきを受けながら、広報Bも体験しましたよ!

 まずは、山中研究室の研究員として登録し、iPS細胞の開発に向けて実験を始めるところからスタート。体細胞をiPS細胞に変化させるのに必須の24種類の遺伝子の中から、候補を絞り込んでいく設定で、各遺伝子を一つずつ体細胞に入れる実験に挑戦します。

iPSマスターの和田濱先生に教わりながら進めていきます。

まずは名前を登録。これで広報Bも山中研究室の一員です!

「まずは試しに遺伝子を入れてみよう」。高橋講師の誘導に従って進めていきます。


 本物の実験作業をバーチャル体験できるわけですが・・・、これがかなり根気のいる作業。

 余談ですが、この細胞の入れ方も人それぞれ性格が出るんだとか。研究者の場合、1から順にきっちり入れていく傾向が強いそう。
 計画性も根拠もなく、え~い、と見事バラバラに投入していた広報Bです。

 根っからの文系体質の広報B、出だしから早くも悪戦苦闘。「研究者には絶対に向かない・・・(心の声)」と、自ら再確認しながらも諦めずに進めます。

地道に1種類ずつ試しても成功せず困っていると、高橋講師が「24種類全てを入れてみよう!」と提案してくれます。ちなみに、早々に全部入れようとすると、怒られます・・・(まんまと怒られた広報B)。

途中には、何度も「実験ノート」への書き込みと確認、そこからの考察といった作業が挟み込まれ、「研究における実験ノートの重要性」が強いメッセージとして表現されています。


 途中には、ノーベル賞受賞時に話題となった、山中先生がiPS細胞を樹立した有名なエピソードなども登場。「あ、あの話!」と思う人も少なくないはず。

 根気強く実験を繰り返し、いわゆる「山中4因子」と呼ばれる4種類を特定してクリアすると、最後に修了証がもらえます。
 苦戦した分、何とも言えない達成感!
 研究者も、きっとこの喜びがあるからこそ、気の遠くなるような長い挑戦に、諦めずに挑み続けることができるんだろうな。

iPS細胞が出来たときの画面。発見にあたって多大な貢献をしてくれた研究者を実名で登場させるなど、随所に山中先生自身の思いもちりばめられています。

広報Bも無事修了書をゲット! ほとんど和田濱先生のおかげですが・・・

 

 ゲームの最後には、
「先入観にとらわれずに実験をしてきたからこそ、iPS細胞をつくることができた」
「トリックや難しいことなんて何もない。知恵を絞っただけ」
「常識なんて、できてしまえば何でもないこと。でも、実はこれをみつけるのがとても難しい」
 などといった、一研究者として果敢に挑戦し続ける山中先生が伝えたい大切なメッセージも込められています。

 ですが、このゲーム、かなりの高レベル・・・。
 広報Bは、和田濱さんの付きっきりのご指導でやっとのこと理解できるくらい・・・。

 今後は、小さなお子さんでも楽しみながら学べるように改良も検討中だそうですよ~!

Q.和田濱さん、「iPS MASTER」の今後の予定は?

 ― 現在は、研究所内に設置されているタブレット1台でしか体験できませんが、今後は台数を増やす予定です。
 また、外部の科学施設などへの設置や、CiRAカフェなどのイベントでも体験できるよう、会場設置も検討中です。
 iTunesでダウンロード出来るようにすることも進行中。それが実現すれば、もっと多くの人に「iPS MASTER」を楽しんでもらえると思います!

山中所長からのメッセージ

CiRAではiPS細胞を使った新しい医療を、一日も早く患者さんの元に届けられるよう日々研究しています。

また、研究だけではなく、iPS細胞技術をより多くの人に理解していただけるように、講演会やサイエンス・カフェなどのイベントを開催したり、ウェブページを作成したりと、さまざまな活動をしています。

CiRAの研究・活動に今後ともご支援・ご理解のほどお願い致します。

 CiRAのアウトリーチ活動の実は!、いかがでしたか?

 ノーベル賞の受賞によって、世界的にその名を知らしめたiPS細胞研究ですが、医療の分野で大きな貢献をなしえる上では、ただ研究を進めることだけではなく、その研究内容や意義を広く知っていただくことも、大切な作業です。

 みなさんに研究の意義を理解していただき、応援していただいてこそ、iPS細胞研究は、今後もますます発展させることが出来るのです。

 今回の「実は!」で、iPS細胞研究に興味をもってくださった方、まずは一度イベントに参加してみてはいかがでしょうか?

その他、さまざまなイベント情報はこちらをチェック

今回ご紹介したイベント以外にも、CiRAシンポジウムや研究棟見学会など、さまざまな取り組みを実施しています。

一般の方対象イベントスケジュール

https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/event_calendar.html

もっとiPS細胞について知りたい人はこちらも!

iPS細胞について、もっと詳しく知りたい!という方には、こんなページもあります。

よくある質問

「iPS細胞を用いた細胞移植治療はいつ実現するのですか?」などなど、誰もが気になる質問にお答えします。

http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq1.html

用語説明

「iPS細胞とは?」「初期化とは?」などなど、知ってるようで知らないiPS研究に関する専門用語をわかりやすく解説。

http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq3.html

iPS細胞研究を応援したい!という方はこちら

iPS細胞研究基金

http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/about/fund_request.html

関連リンク

京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)

https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/

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