丸岡啓二 理学研究科教授および堀江武 名誉教授が日本学士院賞を受賞(2018年3月12日)

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このたび、丸岡啓二 理学研究科教授および堀江武 名誉教授が、第108回(平成30年)日本学士院賞を受賞することになりました。日本学士院賞は、学術上特に優れた研究業績に対して贈られるもので、日本の学術賞としては最も権威ある賞です。

授賞式は平成30年6月に東京で行われる予定です。

丸岡啓二 理学研究科教授

丸岡啓二教授は、昭和51年京都大学工学部を卒業、同大学大学院工学研究科を中途退学、同55年にハワイ大学化学科博士課程を終了し、Ph.D.を取得しました。その後、同55年7月名古屋大学工学部助手に採用され、同60年7月同講師、平成2年1月同助教授、同7年4月北海道大学大学院理学研究科教授を経て、同12年4月より京都大学大学院理学研究科教授に就任し、現在に至っています。

今回の日本学士院賞の受賞題目は「キラル相間移動触媒の創製」です。丸岡教授は金属を含まず、かつ精密合成を可能にする有機分子触媒にいち早く着目し、環境調和型のキラル相間移動触媒である「丸岡触媒 ® 」や、さらに高活性の「簡素化丸岡触媒 ® 」の創製に成功しました。その結果、数多くの天然型および非天然型アミノ酸、ジアルキルアミノ酸など、新しい医薬品の開発に向けたキラル物質の選択的かつ大量合成法を確立することができました。たとえば、生理活性アミノ酸であるパーキンソン病治療薬や抗生物質などが容易に合成できます。これらの新しい触媒は、既に試薬化、商標登録され、国内外の大手の試薬会社を通じて広く大学や企業の研究室で使われています。また、10年程前から日本企業が非天然型アミノ酸合成の事業化を開始し、現在、国内および欧米の製薬会社から新規医薬原料や中間体用としての非天然型アミノ酸の受託合成を請け負っており、そのうちの幾つかは既に治験薬の段階に至っています。

なお、丸岡教授の卓越した業績に対し、これまでも平成22年中日文化賞、同23年アーサー C. コープ・スカラー賞、紫綬褒章、フンボルト賞、同24年東レ科学技術賞、同29年高砂香料国際賞「野依賞」など、多数の賞が授与されています。

堀江武 名誉教授

堀江武名誉教授は、昭和40年京都大学農学部農学科を卒業、同年農林省農業技術研究所物理統計部研究員として採用、同52年農林省農業技術研究所物理統計部主任研究官、同56年京都大学農学博士の学位を取得、同58年農林水産省農業環境技術研究所環境資源部主任研究官、同59年農林水産省北陸農業試験場環境部農業気象研究室長を経て、同60年京都大学農学部教授に就任。その後、平成3年京都大学農学部附属農場長・亜熱帯植物実験所長、同9年京都大学評議員の要職を務めたのち、同18年に定年退職、京都大学名誉教授の称号を授与されました。また、定年退職後は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究所理事長に就任し、同26年まで務めました。

今回の日本学士院賞の受賞題目は「アジア稲作に及ぼす地球温暖化の影響に関するシステム農学的研究」です。堀江名誉教授は、アジアの基幹食料であるコメの生産に及ぼす地球温暖化の影響と適応策を明らかにする目的で、アジアの主要な稲作気候帯をカバーする水稲の品種・地域比較栽培ネットワーク試験、CO 2 濃度を富化した温度傾斜型温室での水稲に対するCO 2 濃度と温度の複合処理実験などによって得られたデータを解析し、大気環境が水稲の生育・収量に及ぼす影響を高い確度で予測する数理プロセスモデルの開発に成功しました。このモデルに、大気大循環モデルが予測する大気CO 2 濃度の倍増時の気候値を入力し、アジア各地域の水稲生産に及ぼす地球温暖化の潜在的影響を明らかにしました。さらに、高CO 2 濃度・温暖化気候に高い適応性をもつ品種開発の目標形質とその遺伝資源を提示しました。これらの研究成果は、IPCC報告書などを通じて、温暖化防止の国際世論の形成に貢献するとともに、内外の様々な研究機関で地球温暖化と食料問題の解決を目指す研究に活用されるなど、先導的役割を果たしてきました。

また、堀江名誉教授は、アフリカ稲センター(WARDA)の理事、国際稲研究所(IRRI)のコンサルタント、「地球温暖化と農業・食料安全保障」などの国際プロジェクト研究の組織委員、Field Crops Research, Agricultural Systems など多くの国際学術誌の編集委員(長)として国際農業研究に貢献するとともに、その卓越した業績に対し、これまでも昭和61年日本農業気象学会賞、平成11年日本農学賞、読売農学賞、同15年アサヒビール地球環境科学研究賞など、多数の賞が授与されています。

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受賞理由等詳細は、 日本学士院のホームページ をご参照ください。