橋田充 教授 最終講義

題目

「薬物と投与技術の進歩と将来像： 医療の発展に向けて」

演者略歴等

1974年（昭和49）年に京都大学薬学部を卒業後、引き続き同大学大学院に進学し、1979（昭和54）年に博士後期課程を修了。以後、米国カンサス大学薬学部の研究員を経て、1980（昭和55）年より京都大学薬学部薬剤学講座の助手、1983（昭和58）年より助教授を歴任の後、1992（平成4）年に教授に昇任し薬剤学・薬品動態制御学分野を担当した。また、2002（平成14）年から2期にわたり薬学研究科長・薬学部長を務め、学部教育6年制移行の変革期において、薬学部・薬学研究科の運営と発展に力を尽くした。さらに、2008（平成20）年からは本学物質－細胞統合システム拠点（iCeMS）の教授職も併任するなど、教育・研究の両面で多大な功績を残した。

研究面においては、薬剤学とりわけ薬物体内動態の精密制御を目的とするドラッグデリバリーシステム（DDS）という医薬品投与に関する新しい思想および技術の領域において、その揺籃期より先駆的研究を展開し、学問の体系化を主導するとともに、薬学のみならず医学や工学を統合した新しい研究領域を牽引してきた。その成果は、1990（平成2）年Takeru & Aya Higuchi 記念賞、1998（平成10）年国際薬学連合（FIP）Pharmaceutical Scientist of the Year Award、1999（平成11）年日本薬剤学会賞、2005（平成17）年日本薬学会賞およびControlled Release Society（CRS） Founders Award、2007（平成19）年米国薬学会（AAPS）Research Achievement Award in Pharmaceutics and Drug Delivery、2010（平成22）年日本薬物動態学会賞などの受賞、あるいは多くの学協会のフェロー称号の授与などの形で、国内外の学会において高く評価されている。

教育・研究に加えて、日本DDS学会理事長、日本薬剤学会会長、日本薬学会副会頭など学会の要職を歴任しその発展に尽力するとともに、計12年間にわたり国際薬学連合の副会長および学術部門（BPS）議長を務め、薬学分野における国際的な学術交流に大きく貢献してきた。また、6年間日本学術会議会員（第二部）を務め、我が国の学術、科学・技術の振興に貢献すると共に、薬事行政の分野でも、厚生労働省薬事・食品衛生審議会会長などとして、医療の改革や新薬開発の推進、日本薬局方の充実などに多大な貢献があった。