富永茂樹 人文科学研究所教授 退職記念講演会「転位する観客-啓蒙と革命のあいだで」

開催日
2015年03月10日 火曜日
時間
16時00分~17時30分
要申し込み
不要
公開日

 2014年度をもちまして、富永茂樹 人文科学研究所教授が定年により退職することとなりました。

 つきましては、退職記念講演会を以下のとおり開催しますので、皆さまお誘いあわせのうえご来場ください。

基本情報

開催地
  • 吉田キャンパス
人文科学研究所本館 4階大会議室
対象
  • 在学生の方
  • 一般・地域の方
一般

イベント内容

転位する観客―啓蒙と革命のあいだで

演劇=劇場(théâtre)という語はギリシァ語で「見る行為」を意味するtheaに由来しています。つまりこの公共空間を支配しているのはまずなによりも眼差しです。

ところで、18世紀の末になって観客の視線についてひとつの驚くべき言説が登場します。カントは「諸学部の抗争」でフランス革命という事件で重要なのは、公平かつ普遍的な眼差しを向ける観客が公的に出現したことであると述べています。この観客は革命に参加はしないがしかし熱狂的な存在です。時代を半世紀遡ると、習俗の穏和化とのかかわりで、商業にかかわる人間が互いに観客であることに注意を向けていたのが「法の精神」のモンテスキューです。二人のあいだで観客の眼差しは何度かの転位を繰り返します(ルソー、ロベスピエールなど)。この転位は啓蒙と革命の連続・非連続を考える上で無視できません。

他方で同じ時期には、実際の劇場でもひとつの変化が生じます。平土間と呼ばれる場所で立ったまま劇を見る客の整理がはじまりました。彼らは大声で野次を飛ばし、場合によっては演劇の進行に関与する「熱狂した」存在でしたが、やがて座席が設けられることで、しだいに穏やかな存在となったとされます。ですがこの観客の静穏化は、カントが「啓蒙とはなにか」で推奨した活字印刷を黙って読んで理性を公的に使用する読者公衆の登場と相同な関係にあります。したがってまたここでも、観客の転位は啓蒙の本質的部分、とりわけ公共領域の形成との関係で、きわめて重要な関係をもつことがわかってきます。

お問い合わせ
人文科学研究所 総務掛
Tel: 075-753-6902
E-mail: zb-academy*zinbun.kyoto-u.ac.jp (*を@に変えてください)