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2007年12月7日

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鍋島陽一教授が2007年度武田医学賞を受賞

受賞テーマ:動物個体の形成と機能維持の分子機構の研究

鍋島陽一教授鍋島陽一教授の受賞理由は、動物個体の発生分化機構、並びに動物個体の恒常性維持機構の分子遺伝学的研究を行い、以下のような顕著な業績をあげられたことに対するものです。

1) 筋細胞における遺伝子発現の制御機構の研究をとおして「単一遺伝子から複数の遺伝子産物が合成される仕組み」を発見した。
2) 筋細胞の増殖と分化の分子機構の解析により、「転写因子の発現カスケード、並びに、その正と負の制御によって筋細胞系譜の決定と分化、増殖が制御される」ことを解明し、細胞分化に関する基本概念の構築に貢献した。
3) ショウジョウバエ、マウスの中枢神経系の形成異常を示す変異体の解析を出発点として「神経幹細胞から神経細胞が生まれる仕組み、機能性神経細胞への運命決定機構、神経細胞が移動して脳の層構造を形成する機構」の解明に貢献した。
4) 未分化型精原細胞(精子形成の幹細胞に相当)で特異的に発現する転写因子を同定し、その発現をマーカーとして、「未分化型精原細胞が幹細胞としての性質を保持する仕組み、精子へと分化する機構、未分化型精原細胞のニッチの構造上の特徴の解明」に貢献した。
5) 挿入突然変異の解析により多彩な老化疾患類似変異表現型をもつマウス系統を発見し、原因遺伝子;α-Klothoを同定した。 また、その機能解析を進め、α-Klothoがカルシウム代謝を統合する因子であることを証明し、カルシウム恒常性維持機構に関する新しい概念を提唱した。 更に、β-Klothoを発見し、そのコレステロール・胆汁酸代謝、エネルギー代謝制御における役割を解析しており、その発展が期待されている。


鍋島教授略歴
1972年 新潟大学医学部卒業後、同医学研究科に進学、1976年医学博士号を取得。同大学医学部助手(生化学)・講師を勤め、1984年癌研究会癌研究所研究員・主任研究員、1987年厚生省国立・精神神経センター神経研究所遺伝子工学研究部長、1998年 4月大阪大学細胞生体工学センター教授を経て、同年11月 京都大学大学院医学研究科教授に就任。2005年日本学術会議第20期会員、京都大学医学研究科副研究科長を2007年9月まで務め、現在に至っています。1998年度ベルツ賞(共同受賞)、2005年度上原賞を受賞しています。

医学賞贈呈