トピックス 2005年12月26日
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『0次予防健康づくり推進事業』(ながはまプロジェクト)の実施と京都大学大学院医学研究科の考え方

 2001年のヒト全ゲノム解析の終了は、生物学のみならず医学に大きな影響を与えました。多くの単一遺伝子疾患については、原因が遺伝子の配列情報の突然変異として定義することが可能となり、その結果、発症のメカニズム、治療、創薬、予防が大きく進展しました。しかし、多因子疾患の原因の解明は依然として解明されていません。

  「ながはまプロジェクト」の目的は、多因子疾患の発症における、遺伝的感受性と、種々の環境要因および生物学的要因の相互作用を明らかにすることにあります。40歳から69歳までの男女 10,000人の参加者から血液と尿の提供を受けると同時に曝露(注1)に関する情報を提供していただき、その後の種々の追跡調査により、アウトカムに対するリスク要因を同定することが可能となります。さらに参加時に提供いただく血液と尿を保存したサンプルバンクを形成することにより、将来新たなゲノム解析手法が開発された場合や、現在まだ萌芽状態のPost-genome時代の医学研究に対応したインフラ整備もなされることになります。そのため本プロジェクトは多くの医学研究に多大な貢献をすることが期待されます。

  本プロジェクトに参加する京都大学大学院医学研究科の分野は25に及び、長浜市の死因の56%を占める三大疾患(悪性新生物、心疾患、脳血管疾患)をはじめ、メタボリックシンドロームや糖尿病、大腿骨骨折や緑内障など多岐に及びます。

  その結果として長浜市にもたらされる成果は、『0次予防健康づくり推進事業』において、科学的根拠を基にオーダーメイドの疾病予防対策を導入した未来型健康づくりを推進することが可能となると考えています。

  本プロジェクトは遺伝子解析を含むため、特に倫理的課題に関しましては、三省(文部科学省・厚生労働省・経済産業省)合同指針と呼ばれる「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成13年3月29日作成、平成16年12月28日全部改正、平成17年6月29日一部改正)」に基づいて一定の合意を見出すための協議会を設置し検討を重ねたいと考えています。今後、同様の研究が行われる際のモデルとなるものを「ながはまルール」として確立し、市民の方々の同意を得た研究を推進していきたいと考えています。


注1)種々の環境要因および生物学的要因(性と年齢)の有無あるいは強度を曝露と呼ぶ。環境要因は、社会的環境、職業、ライフスタイル、出産歴、医学的・生理的環境等を含む。

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