平成19年度以降の入学試験について
−最終報告−


 本学では、平成元年度(法学部は平成2年度)から分離分割方式による入学者選抜を実施し、共通一次試験(平成元年度まで)・大学入試センター試験(以下、「センター試験」と記す。)と本学が実施する個別(第2次)学力検査(以下、「2次試験」と記す。)によって合格者を決定している。これから15年あまりが経過する中で、18歳人口の減少、指導要領の改訂とゆとり教育などが入学者の学力に大きく影響している。このような大学入学を取り巻く環境の大きな変化は、平成15年度に実施された「入学試験」に関する本学の自己点検・評価報告書からも読み取れ、改善に向けていくつかの指摘がなされている。また、このような変化の中、平成15年度には部局長会議のもとに尾池副学長(当時)を座長とする入試制度検討WGがおかれ、本学の入学試験の改善に向けての課題が示されている。
さらに、平成16年4月1日から国立大学が国立大学法人に移行したのを機に、各大学はその入学者受入方針に基づき、それぞれの特色を生かした入学者選抜を行うことが一層求められるようになっている。また、社団法人国立大学協会(以下、「(新)国大協」と記す。)においては、平成19年度以降の入学者選抜に関する検討を始めており、平成16年11月にその中間報告が出された。それによれば、平成19年度の入学者選抜は検討に要する時間的制約から平成18年度の方式を踏襲せざるを得ないが、平成20年度以降については、抜本的入試改革が必要であるとの方針を示している。このような議論も視野に入れたうえで、本学としての独自の入試制度改革を図ることが大切である。また、入学者選抜制度の検討には、高等学校以下の初・中等教育に及ぼす影響や、入学後の教育体制等を考慮することが重要である。
以上の点を踏まえ、入学者選抜方法研究委員会では、本年3月から各科目等に関わる臨時委員を加え、平成19年度以降の入学試験について検討を進めてきた。これまで行った検討の結果を報告する。

1.基本的視点
 本学における入学者選抜を考えるうえで最も重要なことは、学力面で質の高い学生を積極的に確保することである。それには、総合大学として国語・数学・英語・理科・社会(地歴及び公民)のいわゆる5教科(以下、「いわゆる5教科」と記す。)の基礎学力の確保が重要な課題である。またその一方で、多様な受験生に適切に対応することも必要であろう。このためには、本学における教育の基本理念と入学者受入方針にのっとり、入学試験のあり方を継続的に点検し、入試制度の質を高める不断の努力が必要である。
本学の入学者選抜制度は、センター試験と2次試験を中心に行われている。この制度の内容と運営上、2次試験とセンター試験とは切り離すことはできないが、現行の分離分割方式を念頭において2次試験とセンター試験とに分け、さらに2次試験については前期日程試験と後期日程試験に分けて検討した。また、入学者受入方針は入学後の教育と連動するものであり、併せて入学後の教育についても言及することとした。
入学試験は京都大学教職員全員の責務であり、重要かつ責任の重い仕事である。その認識のもとに入学試験の責務を公平に負担することの原則を確立し、その仕組みを整備する必要があることを強調したい。

2. 2次試験
(1) 後期日程試験におけるいわゆる5教科について
 本学における前期・後期の募集人員の比率は、全学で87:13(平成16年度)であり、後期志願者に占める前期・後期併願率は約73%(同)である。また、本学では2次試験において、前期日程は5教科14科目(ただし、数学は文系数学と理系数学で2科目と勘定する)、後期日程は4教科11科目(同)を出題している。
後期日程試験の出題科目が前期日程試験と異なる学部もあり、いわゆる異なる尺度による選抜とされているが、前記の併願率からわかるとおり、現実には前期日程試験で不合格になった受験生の多くが後期日程試験を受験している。また、多様選抜ではない、いわゆる5教科の学力検査のように基本的な学力を測る試験において、前期と後期で著しく異なるタイプの試験を行った場合は、入学後の本学の教育体制・教育レベルを考えた場合に問題が大きいと考えられる。逆に同じタイプの試験であるならば、後期日程の募集人員を前期日程に上乗せすれば、前期日程試験1回で募集人員全てを選抜することと論理的には同じであり、受験生への負担も軽減されることになる。
さらに試験実施の観点からは、限られた日程で前記のように多数の教科・科目の出題採点を一つのミスなく行うことは、教職員の負担や問題の質を確保する点からも限界に達している。
 以上の点から、後期日程試験でいわゆる5教科の共通問題としての学力検査を廃止する。

(2) 受験機会の複数化の確保についての考え方と後期募集について
 分離分割方式の考え方の基となっているのが、多様な選抜と受験機会の複数化の確保である。しかしながら、本学がそうであるように、多くの大学で同一大学・学部の前期・後期併願者が多数を占めており、定められた全体定員を前期日程と後期日程に割り振っていることを勘案すると、受験機会は2度あっても、合格の可能性が増えているとは言えない。むしろ現在の前期・後期の併願率の高さが示唆するところは、かえって適切な大学選択を損なうものであり、実質的には各志願者の合格のチャンスを減らしているという事実である。
国立大学としては、(新)国大協などでの議論を通して、この事実を社会的に訴えていくことが必要である。さらに、大学教育の機会均等の考え方でいえば、いくつかの国立大学が組となって試験日程の設定を考慮し、受験生に対して複数回の受験と合格が可能となるような仕組みを考えるべきであろう。
(旧)国立大学協会は、平成18年度入試について、前期・後期日程の募集人員の弾力化を行い、少ない比率の募集枠に推薦あるいはAO入試を含めてよいとしている。これは推薦やAO入試の実施により受験機会の複数化が確保されるならば、後期日程を実質的に廃止してもよいことを意味しているといえる。本学についていえば、推薦・AO入試の適切性については慎重な検討が必要であるが、センター試験と多様選抜によって後期日程の募集を行うのであれば、それに相当するものを推薦入学として前期日程試験の前に行うことは、実質的にはよい学生を確保する一つの方策とも考えられる。
いずれにせよ、後期日程試験でいわゆる5教科の共通問題としての学力検査を廃止した場合、後期日程の募集自体を(廃止も含め)どのように実施していくのかは、各学部が入学者受入方針に基づき主体的に判断することである。

(3) 前期試験について
1 試験日程については、(新)国大協により定められた前期日程に行うものとする。
2 全学部ともいわゆる5教科にわたって学力試験を行う。全教科・科目とも2次試験用に本学で独自の試験問題を作成する。さらに、各学部においてそれらの試験問題による5教科の学力試験が可能となるような、教科・科目に関わる試験実施体制の整備を今後の検討課題とする。
3 各学部は入学者受入方針に従い、選抜方法あるいは判定基準の多様化に努める。面接の導入、募集人員を分けて異なるタイプの試験を課す、同一の試験であっても合否判定において一部異なる基準を用いる等がその一例である。
4 後期試験に割かれていた人的資源を生かし、丁寧な採点を行い、また入試ミスを起こさないように努める。

(4) いわゆる5教科の出題及び作題について
1 本学で作成する2次試験問題は、入学者受入方針に沿った学生を選抜するのに適切な内容となるようにする。
2 各学部の出題教科・科目とその選択については、入学者受入方針とともに入学後の初年度教育体制を十分考慮して決定する。
3 すべての教科・科目についての作題に関し、継続的・組織的に検討し、知見を蓄積していくための専門委員会(仮称: 出題評価検討専門委員会)を入学者選抜方法研究委員会のもとに設置する。また、この専門委員会は出題採点に係る全学支援体制の確保、学部側の要望と教科側の意見の調整なども行う。例えば、「公民」の出題の妥当性、「地歴」2科目の受験の可否、「理科」の出題のあり方などの検討を行う。
4 作題にあたっては、教科・科目の特性に応じて、できる限り記述式の解答を求める形式を心がけ、思考過程がわかるようにする。特に理科については、平成15年度の自己点検・評価報告書で指摘された問題点の改善に留意するものとする。なお、教科によっては試験時間の延長も考慮する。

3. センター試験について
(1)本学にとってセンター試験の賢明な利用
論理的な思考過程を評価する記述式の解答を要求する2次試験を実施しようとする場合、その採点には多大な時間と労力が必要となる。効率的に2次試験を実施するために、現状ではセンター試験を第1段階選抜に利用する2段階選抜方式は不可欠であり、このためにも本学においてはセンター試験を利用する。
また、受験生のいわゆる5教科に関する基礎学力を十分に測るためには、本学の2次試験とともに、センター試験を2次試験の一部に代用あるいは加味することによって、賢明な利用を図る。

(2)センター試験の実質的利用
後期日程を存続させ、多様選抜による募集を残す場合には、いわゆる5教科についての学力検査としてセンター試験を実質的に用いることが必要である。これは、前期日程試験に先立つ推薦入学を行う場合や、前期日程試験において必ずしもいわゆる5教科によらない選抜方法を採用する場合にも、同様に必要である。

4. 入学後の教育との関連について
(1) 入学者選抜方法の策定にあたっては、各学部は初等中等教育・入学試験・大学教育
  の連接について十分に配慮する必要がある。特に高等学校における必修科目と選択科目の内容と、大学1年次の教育内容のつながりについて考慮することが必要である。

(2) 入学後の学生の資質、適性に応じた進路変更については、積極的に対処し促進を図る方向で今後検討したい。転学部・転学科の制度は、その趣旨にあうように運用されるよう配慮する必要がある。また、これについて学部間の意見調整を継続的に行う場を設けることが必要である。

5. これからの入学者選抜方法の検討について
 国立大学の入試制度は平成20年度以降大きく変わることが予測される。本学においてもこれに対応し、中・長期的な入学者選抜方法の検討を今後も継続して行わなければならない。このような検討を行う場として、前出の出題評価検討専門委員会における各教科の代表者及び全学的立場からの委員を臨時委員として参画させた、拡大した入学者選抜方法研究委員会を継続させる必要があると考える。この委員会では、出題体制や教科・科目等について検討を行い、実効ある委員会とすることが肝要である。