平成16年6月3日

文部科学大臣 河村 建夫 殿
財務大臣 谷垣 禎一 殿
内閣府特命担当大臣 竹中 平蔵 殿
総務大臣 麻生 太郎 殿

京都大学総長  尾池 和夫
同志社大学学長 八田 英二
立命館大学総長 長田 豊臣

高等教育の充実に向けて(要望)

 経済財政諮問会議の第11回および第12回会議は、それぞれ平成16年5月19日と28日に開催され、規制改革、社会保障制度改革、「基本方針2004」などが議論されました。
 この「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(原案)」の中には、いわゆる「聖域なき構造改革」の一つとして、「規制改革、官製市場の民間開放」という項目が含まれています。
さらに、本年は新たな科学技術基本政策の策定に向けての検討が開始されるとも聞き及んでおります。
 これらの政策の中において、科学技術創造立国・教育立国としての21世紀の日本のあり方に鑑み、公財政支出教育費、とりわけ高等教育に対する支出を他の先進諸国水準に大幅に増額させる必要があります。
 とりわけ、OECD各国平均で1.0%となっている高等教育への公財政支出のGDP比率が、日本はわずか0.5%でしかない現状を早急に改善する必要があります。
 さらに、私たちは、この「聖域なき構造改革」という言葉のもとに、すでに報道などで平成17年度予算編成にあたってのシーリングについて、5%、3%、1%、というような声があると聞きます。万一、大学における教育や研究の経費にシーリングが設定されることになると、それは日本における高等教育の将来に、長期に渡って大きく影響を及ぼすことになるのは明らかであります。
 また、現在国際社会で日本の高等教育の質が問われ、国の将来にとってその抜本的な向上が課題となっている中で、日本の高等教育を受ける学生の73%が学ぶ私立大学への経常費補助金等の大幅な増額が必要であると考えます。
 さらに日本の国際化に果たす大学の役割を念頭におく時、特に日本への留学生受け入れを他の先進諸国水準に上げることと、その質の向上を図る必要があり、そのための予算措置として、具体的にはODA予算に占める人材育成向け予算を大幅にアップする必要があります。同時に、優秀な若い学生・大学院学生、研究者の海外派遣についてより積極的な支援制度を拡充することも必要不可欠です。
 このような考えは、大学人のみならず例えば日本経済団体連合会が平成16年4月19日に内閣総理大臣ほか関係各大臣に提出した建議『21世紀を生き抜く次世代育成のための提言−「多様性」「競争」「評価」を基本にさらなる改革の推進を−』の中でも、「教育予算が世界最高レベルにまで引き上げるよう努力することを求めたい」とされるなど、日本の国民全体が求めている今後の日本のあり方に通じるものと確信します。
 関係各位におかれましては、このような高等教育に関する私たちの熱意と要望の趣旨を充分ご理解の上、日本の未来のために、ご協力を賜りますよう切望するものであります。