報道関係公表用


平成14年度 国立学校特別会計予算内示の概要


京都大学

事              項

備                  考

【研究科以外の基本組織】  

 地球環境学研究部・地球環境学教育部の新設

 

【全国共同利用施設】

 学術情報メディアセンターの新設

【学内共同教育研究施設】

 低温物質科学研究センターの新設

 国際融合創造センターの整備

                    △5人

 修士課程  29人,博士課程  20人

 

(全共)大型計算機センター及び(学共)総合情報メディアセンターの転換

 

(理学)機器分析センターの転換

【特殊診療施設】

 デイ・サージャリー診療部の新設

 探索医療センターの整備

 
【附属施設】

(再生研)
 幹細胞医学研究センターの新設

(ウイルス研)
 感染症モデル研究センターの新設

 


(時限10年)


ウイルス感染動物実験施設の廃止・転換

概 要

研究科以外の基本組織

 地球環境学研究部・地球環境学教育部の新設 

 人間活動の増大や急激な人口増加によって,環境に対する負荷が地球規模で拡大し,その結果,人類は様々な環境問題に直面している。この問題の解明・解決のため,人間活動と自然環境の相互関係に広く目を向けた総合的な研究並びに関連する科学技術及びそれを生み出してきた社会システムに関する諸研究を協同し,地球環境とそれを支える人間社会双方の持続的な構築のための新たな文明理念と科学技術の知識の構築,並びにそれを具現化し得る人材育成が求められている。

  このような社会的要請に対応し,地球環境学分野における成果を創出していくためには,研究面では機動性・学際性を有する柔軟な組織体制が有効であり,教育面では地球環境学分野での教育上の継続性・体系性を確保しつつ総合的で高度な教育を実施する組織体制が有効である。

  このため,研究組織として「地球環境学研究部」並びに教育組織として「地球環境学教育部」を設置し,研究面,教育面相互に密接な連携を図りつつも機能的な役割分担をもって,このような要請に対応しようとするものである。

入 学 定 員

(地球環境学)地球環境学専攻

 

(地球環境学)環境マネジメント専攻
 

 

修士課程  29人

  △5人

博士課程  20人

  △4人

博士課程  10人

※学生受入れは平成14年4月から開始し,環境マネジメント専攻の博士課程については平成16年4月からとする。

全国共同利用施設

 学術情報メディアセンターの新設

  大型計算機センターでは,先端的な研究活動を支援する情報処理サービスの提供を行い,また,総合情報メディアセンターでは,情報技術を用いた教育支援を行っている。しかし,各情報関連施設が個々の目的に応じたサービスを個別に提供するだけでは,高度化する研究・教育における多様なニーズや複雑化する課題に対応できない。

  このため,全学的な立場から情報基盤に関する研究・開発・整備・運用の一元的な実施を目的に,両センターを統合して学術情報メディアセンターを設置する。これにより,高度情報通信社会において必須の情報基盤を整備し,研究・教育の高度化を支援するものである。

学内共同教育研究施設

 低温物質科学研究センターの新設

  20世紀において育ってきた低温科学は,自然界の法則を究明する最も先端的な研究分野であるとともに,低温環境下での生体を含む物質の解析・分析を可能とし,低温下で実現される超伝導を利用した高度な分析機器の活用による科学・技術の研究開発基盤を支えるものとなっている。欧米先進国と我が国で発展させてきた低温物質科学技術は,ナノテクノロジー・材料や多量情報通信技術の開発に不可欠であるだけでなく,低温環境を利用することで高度な計測分析が可能になり,ライフサイエンスの発展にも深く関わるため,我が国にとっても戦略的に重要な基礎研究分野である。

  しかし,現在のところ我が国では,低温物質科学分野において,その先導的な基礎と学際的先端的応用を結びつけた研究は進んでいない。そこで,本学のこれまでの低温科学,物質材料研究,バイオサイエンスの研究と低温物質科学展開に関わる実績を踏まえ,低温科学とその学際的分野の研究の総合的・効果的・効率的推進を目的とした横断的な取り組みを可能にするため,理学研究科の機器分析センターを転換し,「低温物質科学研究センター」を設置する。また,本センターは,液体窒素や液体ヘリウムなどの寒剤を学内へ安定的に供給し,事故防止対策を講じることにより,低温科学が関わる広範な研究分野を支援する。

学内共同教育研究施設

 国際融合創造センターの整備


 大学と企業等との連携・協力は,大学の社会貢献を進める上でも,学術研究の進 展の上でも,大きな意義を有している。国際融合創造センターは,産学の連携により国際的な視野に基づく組織的・主体的な共同研究を推進することを目的として平 成13年度に設置された。

 一方では,科学技術基本計画が閣議決定され,ナノテク・材料の研究分野は,その重点分野の一つとして速やかな対応が求められているのみならず,新たな産業創出の場としても注目されている。また,同計画の各重点分野の研究にはソフト・ハー ド両面からのアプローチが必要であり,ハードの基本である材料の飛躍的発展なくしてその進歩はありえない。このため,ナノテク・メゾ材料の研究分野は,重点分野の共通基盤でもあることから研究成果の早急な実用化が望まれている。

 そこで,京都大学が世界に向けた知の結集・情報発信センターとして位置付けている国際融合創造センターの創造部門にナノテク・メゾ材料分野を整備し,こうした要望に応えようとするものである。また,学内外の研究者と企業の窓口となる融合部門も整備し,海外との連携及び大学からのベンチャー創出事業を加速するものである。

特殊診療施設

 デイ・サージャリー診療部の新設

 高度な医療水準を維持しながら,医療費を抑制し患者サービスを向上する診療体制の一つに日帰り手術(デイサージャリー)がある。

  日帰り手術は欧米においては長い歴史があり一般的な医療として認知されているが,我が国においては近年ようやく先進的医療として広がりつつあり,医学部附属病院においても入院手術として行われていた手術を徐々に日帰り手術に移行させているところである。

 ついては,診療科の枠を超えた日帰り手術専門の組織での患者の受け入れ,手術,周術期管理,経過観察までトータルな医療体制を構築し,より高度な技術を駆使した日帰り手術の確立を図るため「デイ・サージャリー診療部」を設置する。


  探索医療センターの整備


 従来,我が国は基礎医学研究の成果を,新しい医療として確立させ,効果的,効率的に臨床に応用していくという仕組みが構築されていなかった。

 このため,基礎医学研究の成果を,倫理面にも十分配慮しつつ,実際に人を対象として有効性,安全性の検証を行うという「探索臨床研究」(トランスレーショナル・リサーチ)段階の研究を推進することが重要課題であり,その拠点形成が急務となっていた。

 そこで,平成13年度には医学部附属病院に「探索医療センター」を設置し,先端医療の個々の問題点解決に,専門性を持った研究者が集中的に取り組むプロジェクト方式で探索臨床研究を行う部門として,全国公募を行い採択した2つの流動プロジェクトと固定プロジェクトであるポストゲノムプロジェクトからなる「探索医療開発部」と,人への応用を行う上での安全性の確保・倫理面への対応を行い,治療の統計的な有効性を検証する「探索医療検証部」を整備した。

    さらに平成14年度は,「探索医療開発部」の流動プロジェクトの拡充を図るとともに,「探索医療開発部」で準備された方法,材料等を用い,十分な説明により同意が得られ,かつ安全性,有効性が十分に期待される患者に臨床応用し,有効性を検証しながら,患者のケアを行う「探索医療部」を整備する。

附属施設

 (再生研)
幹細胞医学研究センターの新設


  再生医学は,生体の持つ組織再生・修復力を利用し,人為的に制御することにより欠損・障害された細胞・組織・臓器を修復させようとする新しい医学の研究・開発領域である。再生医学における重要なことは様々な形での幹細胞の利用である。

 幹細胞は大きく胚性幹細胞(ES細胞)と組織幹細胞(例,造血系幹細胞,神経幹細胞)とにわけられ,再生医科学研究所においては,幹細胞を用いた再生医学へのアプローチを進めてきた。

 また,21世紀の新しい医学研究開発の潮流である再生医学を総合的に推進し,日本発のコンセプトや画期的な治療法を世界に提供するには,高度な集学的共同研究が行える拠点作りが肝要である。

  このような中,ヒトES細胞の樹立・使用に関する政府指針が本年9月25日に公表されたところであるが,樹立を行うには,研究面での能力実績だけでなく,ヒト胚の提供を受ける不妊医療機関との連携,社会的に承認されるためには倫理委員会などの極めて慎重な手続き等広範囲な準備が必要である。このような過程を経た後,ヒトES細胞株が樹立され,これを全国の研究施設に分配することによってわが国のこの領域の研究発展に寄与するものである。


 このため,日本独自の再生医学を総合的に推進し,人体に潜在的に備わる再生能力を生かした再生治療の集学的共同研究を促進するための必須のセンターとなることを目的とした「幹細胞医学研究センター」を設置するものである。

 (時限10年)

 (ウイルス研)
感染症モデル研究センターの新設

  抗生物質,ワクチンなどの化学療法や免疫療法の進歩にも関わらず,治療の困難なエイズ,エボラウイルス,肝炎ウイルス,O157等の強力な脅威を克服することが人類の急務となっている。このような現代社会に特有の新興・再興感染症を克服していくためには,生命科学研究の成果に裏付けされた,個体レベルでの病原体と宿主の相互作用や発病メカニズムの研究が必要とされる。しかし,このような研究を直接ヒトに適用することはできず,遺伝子改変マウスや霊長類を用いた個体レベルの基礎的な研究が我が国において期待されているところである。

 このような状況下において,これら感染症に対しては,従来の対症療法的な研究だけでなく,遺伝子・細胞レベルから病原体と宿主との相互作用といった個体レベルへの研究を総合的に推進しなければならない。すなわち遺伝子改変マウスを始めとする実験動物を用いた個体感染実験やヒトに近い霊長類モデルを用いた研究の推進が必要不可欠である。

 このため,ウイルス感染動物実験施設を廃止・転換し,新しい高度なモデル実験動物の作成とその免疫学的特質を始めとする高次生体反応の解析及びそれを用いたモデル実験を用い,新感染症に対する治療法,予防法を確立することを目的とした「感染症モデル研究センター」を設置するものである。

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