創立125周年に寄せて

山口 絵美菜

探究の契機が溢れる
京大の日常から、
自由の海を渡る
良き道標を見つけて。

女流棋士(女流1級)
桃山学院大学経営学部ビジネスデザイン学科
教養・文化科目担当講師
毎日新聞観戦記者

山口 絵美菜

京都大学文学部 2018年卒業

 冬のある日、一回生の私は珍しく一限に間に合った。週替わりのリレー講義、心理学の回。「記憶は11歳頃を境に感覚記憶から意味記憶へと変わる」。教授の言葉にはっと顔を上げた。11歳は私が将棋を始めた年齢で、この世界では晩学。将棋を「体で覚えた」棋士との形容しがたい差に悩まされてきた。「私は何のためにここに来たのか」、上達の鍵がここにある。そう確信した瞬間の、だだっ広い教室にまばらな学生の姿、降り注ぐ陽射しの眩しさをこの先も忘れることはないだろう。
 日常の中に探求の契機は溢れている。けれども、羅針盤がなくては航路を決めることは出来ない。皆さんが茫洋たる自由の海にたゆたいながら、良き道標を見つけられることを願う。

2020.02.20 THU

京都大学基金へのご寄付のお願い京都大学基金へのご寄付のお願い

人材育成を中心とする記念事業への取り組みや、
未来に向けて“京大力”を磨き続けるための運用原資として、
京都大学基金への寄付を募集しています。

↑↑